年間聴講100件超! 講演会マニアが経済の明日を占うブログ

1年間に100件超もの経済に関する講演を聴講している講演会マニアが、見聞きした講師の話を通じて日本経済の展望を語るブログです。

6/23 イギリスでEUからの離脱について是非を問う国民投票が行われます。
不安定要素をきらう株式市場では、リスク回避から欧米を始め世界的に株価が下がっており、日経平均も大幅に値を下げています(6/13終値は先週末から400円以上も下がって1万6168円48銭)。
当然ながらユーロ安の展開となり、いつもながら「安全資産」とされる円が買われて円高が加速。2週間前の5/30に1ドル=111円ほどだったのが、6/13には1ドル=105円台後半~106円前半で推移しています。

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自身は残留派でありながら、EU離脱の声の高まりから国民投票に踏み切ったキャメロン首相。

そもそも、イギリスでは何故EUから離脱しようとする動きがあるのでしょう?
そして、仮に離脱してしまったら、世界経済にどのような影響があるのでしょう?
といった根本的な疑問について、イギリスEU離脱論争の理由や背景、目的、メリット・デメリットをまとめて解説したいと思います。


まず、EUにおけるイギリスの立ち位置はもともと微妙なものがあります。
フランスやドイツ、ならびにその他の国家と一定の距離をおきたいイギリスは、かねてよりEUの通貨であるユーロを採用しておらず、従来からのポンドを使用し続けてきました。
(ちなみに、ユーロ使用国家は金融政策の主権を欧州中央銀行(ECB)に譲渡することになり、独自の金融政策を採れません)
また、イギリスは、国境検査なしで欧州各国間の行き来を自由とするシェンゲン協定にも調印していません。
それでも、欧州危機による経済の停滞や、ルーマニアやポーランドといったEU諸国からの移民・難民の増加(イギリスは社会保障が充実しているのです・・・)と治安の悪化は、イギリス国内の反EU感情を高めてきました。

また、記憶に新しいフランスやベルギーでのISによるテロや、ドイツ等で顕在化する移民の問題を間近に見ているイギリス内では、もはやEUの持つ開放性と連帯によるメリットを感じられないという人々が増えているのです。

一方、キャメロン首相は、EUの更なる統合からのイギリスの除外や拒否権、移民優遇規定の一時停止など、EU内での特権的な立場を更に強めたうえでの残留を唱え、EUに残留できれば影響力も高まると国民に訴えかけています。
そして、一定の所得を有し、今の生活で十分安定している富裕層や企業経営層(保守派のエリート層)には残留派が多く見られます。

しかし、特にEU加盟前の時代を知る一定の年代においては、イギリスはEUに加盟しなくてもちゃんとやれるという自負を持ち、国家としての主導権を取り戻そうと意気込む層が存在するとともに、移民に職を奪われかねない(あるいは移民によって給与が低下したり、税負担が増えることを危惧する)比較的所得の低い労働者階級に離脱を支持する割合が増えています。

仮に欧州最大の軍事力を誇るイギリスが離脱してしまえば、経済のみならず安全保障もふくめたEUの連帯に亀裂が生じ、その他の各国でも同様の議論が巻き起こる可能性があります。
それはまさに、実質上ウクライナを併合したロシアの思う壺とも言えるでしょう。

かくして、直近の世論調査では離脱派と残留派が拮抗。
パナマ文書問題や移民制限の公約(10万人以下に押さえる⇒実際はその3倍に・・・)を守れていないキャメロン首相への不満も高まって、このところ離脱派が一気に増えています。
ただし、結局は残留と見る識者が多いようですね。
いくら誇り高きイギリス人とはいえ、立場を決めかねている人々の多くが、最後の最後は経済の悪化~生活の困窮が恐ろしく、現状維持に流れると思われます。
(⇒2016/6/24追記:なんと国民投票で離脱派勝利 直前の世論調査では18-24歳の60%は残留を支持していたのですが、年代が高くなるほど離脱派が増え、65歳以上では60%が離脱を支持していました。)

万一イギリスがEU離脱となれば、ポンドもユーロも通貨価値が下落し、ただでさえ不安定な欧州全体が深刻な不況に陥りかねません。
メリットとして移民を制限できたとしても、今度は対EU各国への輸出に関税の壁が立ちはだかり、EU各国へ自由に展開できないイギリスはマーケットとしての価値を下げ、企業の国外移転や倒産、失業者も増えるというデメリットが考えられます(ECBのドラギ総裁をはじめ、各国首脳も残留するよう訴えかけています)。
尚、日本では株式市場への影響として2千円前後の株安、為替相場への影響として4円前後の更なる円高が見込まれています。イギリスに進出する日産など日系企業の動向も気になりますね。
(円高&ユーロ安の展開は欧州の自動車メーカーに有利なので、競合する日本の自動車メーカーは国際競争力を大きく削がれることになりそうです)

また、現在、シェールガスとの価格競争に陥り、原油価格の低迷が続いている産油国の財政は悪化しており、政府系ファンドによる大量のオイルマネーが市場から一気に引き上げられる動きも見られるなか、果たして世界同時株安の流れに歯止めが掛かるのか?!

6/23イギリスのEU離脱をかけた国民投票の結果から目が離せません!


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ついに安倍首相は消費増税再延期の意向を固めたと、5/26付の朝刊各紙が報じています。
そして、5/28夜には消費税10%への引き上げ時期について2019年(平成31年)10月まで2年半再延期する方針を麻生財務大臣らに伝えたと産経新聞が速報を出しました。
消費増税延期


26日より開幕となった伊勢志摩サミットで現在の世界経済を取り巻く状況が「リーマン・ショック前に似ている」と言及。
かねてより「リーマンショックや東日本大震災クラス」のような事態が起こらない限りは消費増税を行うと表明していただけに、消費増税を再延期するための見苦しい口実として「リーマン・ショック前に似ている」という表現を用い、

「リーマン・ショック直前の洞爺湖サミットで危機の発生を防ぐことができなかった。そのてつは踏みたくない」
「世界経済は分岐点にある。政策対応を誤ると、危機に陥るリスクがあるのは認識しておかなければならない」


としながら、国際公約とされてきた消費増税が行えないのは決してアベノミクスの失敗ではなく、世界的な経済状況(外圧)によるものだと苦しいアピールをしています。
しかも、ドイツのメルケル首相が「危機」は言いすぎだろうと反応し、なんとも恥ずかしい展開に。
持ち出してきたデーターも信憑性を欠き、各国のエコノミストからは鼻で笑われ、「リーマン前」という表現は世界各国で不評を買ってしまいました。
大見得を切って景気条項を削除したばっかりに、リマーンショック級の事態であることをG7首脳を前に演出しなければならないジレンマに陥っているようです。

思い起こせばつい先日の国会で、パナマ文書に端を発する租税回避問題について、日本からケイマンへの証券投資が74兆円に及び、そこへ適正な課税を行えば消費増税はしなくていいのではないかと追及された際も、不確実な税収をあてにはできないとの理由で、改めて責任を持って消費増税を行う意向と答弁したばかりでしたが、舌の根も乾かぬうちに・・・。国会とは何なのか、考えてしまいます。

しかも、消費増税を延期する場合は国民に信を問うと、衆参同日選挙あるいは参議院選挙→衆議院選挙の可能性が現実味を帯びてきました。
もちろん、租税回避の問題や議員定数削減(現状で2020年に10削減のみ)などの課題が解消される前に、手軽な方法として消費増税が行われることは糾弾されるべきですし、そもそも現状の国内経済の停滞ぶりは2014年の消費税8%への増税という失政が主たる原因と見られる以上、この期に及んで消費税を10%にまで引き上げるという暴挙は誰も望んでおりません。
一方、この状況は明らかにアベノミクスの失敗で、野党はこぞって消費税延期をかねてより主張しているわけですし、安倍政権があたかも「英断」のように消費増税延期を争点に信を問うというのも何だか腑に落ちません。


消費税が上がり、物価も上がり、自動車税も上がり、保険料も上がり、控除を減らし・・・
実質賃金の低下にあえぐ国民の視線は、安倍政権に冷ややかであることは間違いありません(´・ω・`)


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今、世界をにぎわせている「ナマ文書」。
中国の習近平や、ロシアのプーチン政権も動揺する文書として、注目を集めています。
今回は、この「パナマ文書」と「タックスヘイブン」について、分かりやすく解説したいと思います。
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まず、「タックスヘイブン(tax haven)」とは、日本語で一般に「租税回避地」と訳されます。
「ヘイブン(haven)」とは遭難した人にとっての避難所や安息の港を意味する単語で、何となく「タックス・ヘブン(tax heaven)」=税金の天国?と勘違いされている方も少なくないと思いますが、当たらずも遠からず。
なにせフランス語では「パラディ・フィスカル(paradis fiscal)」と言われ、まさに税金のパラダイスという意味で使用されています。

自国では税金が高いので、より税の負担の少ない外国にペーパーカンパニーのような書類だけで実態のない会社を作り(オフショア会社)、納税を免れようという「抜け穴」的な仕組で、悪質な脱税やマネーロンダリング(不正に取得したお金を足がつかないように細工すること=資金洗浄)にも使用されています。

もちろん、法人税の負担を低くして外国企業を誘致することで外貨獲得を目論む国家は少なくなりませんが、中には無税のところもあり、国際金融取引上の秩序を省みずあえて不正を助長しているとも見られています。
こうした外国の存在は、自国の税制の根幹を揺るがすものになるため、各国でその対策が講じられていますが、イタチごっこになってしまい、その実態が把握できないことが多くありました。

さて、そこで今回の「パナマ文書」が出てきます。
これはパナマの法律事務所であるモサック・フォンセカが作成したもので、合計2.6テラバイトにおよぶデーターの中には、1970年代からの1150万件&21万4千社の株主・取締役等の情報を含む詳細な情報が記録されています。
昨年、南ドイツ新聞に匿名でリークされたこの「パナマ文書」には、有名人や富裕層など租税回避をはかる固有名が多数含まれており、その全貌は5月にも解析を終えて発表される見通しです。
特に腐敗摘発を掲げてきたはずの習近平の親族や、プーチンの友人の会社が含まれており、使途不明な多額な取引の記録があることで、国民に納税を促す国家指導者層が自身は納税を回避しようと工作を行ってきたことが白日の下にさらされようとしています。

他にも、パナマ文書に含まれる有名人として、サッカーのメッシや、俳優のジャッキー・チェンなど、政治家やセレブを中心に現時点でもそうそうたる顔ぶれが並んでおり、この先、パナマ文書には日本人も含めて様々な名前が挙がってくる可能性がありますね。
心当たりのある人や企業は、今頃びくびくしているのではないでしょうか。

ちなみに、『21世紀の資本』のトマ・ピケティは、資産に応じて課税を強める累進課税の資産税を導入しようと提言しているのですが、単独の国でそれをやっても税率の低い国(タックスヘイブン)へ富裕層が流れるだけなので、世界中で一斉にそれをやろうと、あまり現実的でない主張をしていました。


尚、日本政府の対応として菅官房長官は「パナマ文書の調査に乗り出す予定はないとまさかの見解を発表しています。
ということは、日本の政治家の名前も含まれていたりして・・・。


租税回避は法の抜け穴をついて合法的に行われていることも多いため取り締まりは難しく、モラルの問題とも言われています。
もちろん、政府首脳をはじめとする政治家がやっていればアウトでしょうが、果たしてパナマ文書は「デスノート」になってしまうのか?!
5月の全容解明を座して待ちましょう


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