慶応大学名誉教授でエコノミストの島田晴雄氏。
前回の記事で講演会レポートをお伝えした伊藤元重氏とも近しく、
小泉政権のブレーンを務め、竹中平蔵氏の師匠筋にも当たる方です。
島田晴雄

島田氏の講演を聞いていると、その提言通りに安倍政権の政策が進められていくのが分かります。
本日はそのエッセンスがまとめられた著書『盛衰 日本経済再生の要件』をご案内いたします!

震災後の2012年(民主党政権時代)に本書を上梓した島田晴雄氏は、
デフレを「経済衰退の病」と形容した上で、その脱却を図るリフレ論者の見解を紹介しています。
すなわち、デフレを貨幣現象と捉え、実態の経済に比べて貨幣供給が不足しているにもかかわらず、日銀が量的緩和に消極的であったことがデフレの長期化を招いたという主張です。

以前ご紹介した『デフレの正体』の著者・藻谷浩介氏によれば、こうしたリフレ政策は消費を増やすには至らず、デフレ脱却に寄与するものではありません。
これを踏まえて島田氏は、デフレの正体を「人口減」とする藻谷氏の論を批判的に継承しつつ、
韓国・台湾・シンガポールなど、日本より人口減少が激しいにもかかわらず、「人口減少を座視することなく投資と消費の需要を刺激する特別な戦略」を駆使することで、デフレに至っていない国々がある
 と指摘します。

韓国はアジア通貨危機に伴うウォン安を機に輸出拡大を成功させ、
台湾は大胆な構造改革によって個人消費や民間投資促進策を採るとともに、中国との連携を強化して輸出と内需を拡大し、
シンガポールは外国人労働力を活用し、積極的に海外からの投資を導入して成長を続けています。

これに対しバブル崩壊後の日本では、「投資需要、消費需要を刺激する戦略、政策が不在」でした。
人口減少にともなう市場縮小の展望の中で国内外からの投資が停滞し、「長期的かつ構造的悲観展望を積極的な展望に変える戦略が不在であったことがデフレを助長した」と島田晴雄氏は結論付けています。

また、その上で島田氏は、日本経済の凋落とデフレ長期化の原因を以下の3点にまとめています。

①供給過多の産業構造が高度経済成長時代から進化しておらず、多くの企業が競合の中で弱体化を余儀なくされ、グローバル化も活用し得えず、デフレを助長している。
②高齢化社会の需要を支える医療、健康、住宅、観光において旧態依然としたサービスの提供が行われており、需要喚起に失敗している。
③医療、農業、教育、政治、行政などのシステムが時代の変化に大きく遅れていることが、日本の衰退傾向を助長した。


主要産業におけるワールド・クラス・カンパニーの乱立に見られるような過大な供給構造は、古いビジネスモデルでの価格競争を招き、デフレを誘発します。
加えて、高度経済成長を支えた日本型のビジネスシステム(垂直統合、自前主義、間接金融に依存した低い自己資本利益率、等)から脱却し得ない多くの企業が、資本調達力で外国企業の後塵を拝し、グローバル化、情報化の進む世界市場で低迷を続け、世界調達、世界ネットワークの面でも後れを取っている点が問題とされています。

さらに、農業では、生産性よりも政治と農協に有利な小規模構造が維持され、「開放経済の最大の障壁」となっています。
医療では、高齢化と財政困難により質とアクセスが劣化しています。
教育では、高度経済成長時代に機能した暗記型規格生産方式の弊害と、学部自治を盾に経営の理論と反して教職員の雇用を維持する教授会の体質、それらが少子化とあいまって質が低下しており、問題発見と解決能力や国際志向が養われない状況です。
政治・行政においても、高度経済成長を支えた官僚システムが、自民党の長期政権下における政官民の利権癒着構造のもとで肥大化・強大化し、やがて閣議の形骸化を招き、大きな政策決定がほとんど行われないほどシステムが劣化しています。

こうした島田氏の論点の根底にあるのは、政治・経済・文化・社会を巡る様々なメガトレンドが変容しているにもかかわらず、行政や企業がそれに適応できず、高度経済成長を支えた旧来型のシステムを維持したまま機能不全に陥っている現状への危機感に他なりません。

そこに新自由主義的な市場原理と競争を導入し、産業の振興と、実情に応じて社会を構成する諸システムの健全化を図るという考えが、その基本姿勢となっているようです。

そこで、日本の再生の為に、島田晴雄氏が渾身の著書『盛衰』に記した改善策とは?
改めて読み返すとアベノミクスの教科書とも言いうる内容だけに、また次回、改めてじっくりとご紹介させていただきます ( *`ω´)b

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