今回も前回に引き続き、小泉政権でブレーンを務めた講師・島田晴雄氏をご紹介します。
島田氏が講演会でもお話になる今後の経済政策について、
その核となる著書『盛衰 日本経済再生の要件』での提言は以下の通りです。
盛衰

(1)持続可能な年金制度の確立:生活の安心の第一は年金である。信頼できる年金制度確立の為、保険料、支給開始年齢の段階的引き上げるとともに、給付削減を明示した上で、成長率・人口高齢化率に応じたマクロ調整を実施するべき。

(2)希望格差の解消
:終身雇用システムへの固着や、派遣労働法の改悪(日雇い派遣の禁止等)、年金支給年齢引き上げに備えた高齢者雇用の義務付けという誤った諸政策が、若年者へ雇用が回らない状況を生み出している。また、最低賃金の引き上げは逆に雇用の縮小を招き、雇用調整給付金の支給は終身雇用と年功序列の就業者を保護するにすぎない。企業に依存しない雇用政策によって同一労働・同一賃金の大原則を実現し、解雇法制の整備やキャリア形成の支援によって若者が安心と希望を持てるような、合理的な雇用制度・慣行・政策への転換を図ることが肝要。

(3)エネルギー戦略:震災を機に縮原発を進めるとともに、これまで他国に後れを取ってきた太陽エネルギーを積極的に利用することで、メガソーラーシステムによる太陽経済都市圏を構築するべきである。また、メディアへ影響力を持つ巨大な電力会社が地域を独占することで高コストが維持されたまま競争が排除されている現状を打破し、分散型電力供給体制を構築しなければならない。

(4)国際立国化:中小企業の競争力をいかしたソリューション提供を軸に、対日投資の促進や、TPPへの早期加入、国際人材の練成によって新時代に適した競争力のある国際立国化を推進すべきである。

(5)戦略農業:日本では様々な権益確保のため食糧自給率は意図的に低く算出されており、政府も票田確保のために小規模零細農家を保護して生産性を上げてこなかった。これから戦略的に農業振興を図るには、減反政策を撤廃し、自由化と農地集約をする(零細兼業農家は賃貸収入へ)ことで、生産性向上と効率の高い農家の成長に繋げる必要がある。また、産業農業とその他の農業を峻別した上で、企業の参入を自由化し、さらにTPP参加によって輸出農業への転換を図ることが出来る。

(6)医療の成長産業化:医療の高度化、高齢化、経済成長の鈍化による税収低下と社会保障費の増加というメガトレンドに対し、政府は規制を強化する愚に出ている。また、現状の診療報酬制度は治療の効果とコストについての評価がなされず、質の劣化を招くとともに、過剰診療の問題も生じている。医療の質の向上と産業としての成長の為に、市場機能と民間保険の活用、医療成果重視への誘導、過度の平等主義を見直して自由診療・混合診療制度を導入すること、医療成果情報の開示とIT情報基盤(電子カルテ)整備による効率化を図ることが求められる。

(7)住宅産業の可能性:高度経済成長時代の「スクラップ・アンド・ビルド」に根ざした耐用年数の短さにより、住宅は個人資産となりえず、買い替えも困難で流通しにくい。また、ゼロ成長と人口減少・高齢化というメガトレンドへの変化に産業として対応できていない。住宅ローン負担の過重リスク(変動金利による債務破綻の恐怖)、営業や販促費といった付帯コストが多大な日本型ハウスメーカーの破綻、ゼネコンの縦割り構造にもとづく市場価格の不透明さといった問題点を解消すべく、コンサストラクションマネジメントを推進して流通を促進させ、家賃の所得控除、生前贈与税の税制控除といった補助政策が重要。さらに高層化、地下の活用、エコ住宅、健康住宅化によるリニューアルで、産業として大いに成長しうる。

(8)観光産業の躍進:観光は経済の約一割もの波及効果を持つ。政府も成長戦略の中で、観光を地域活性化の切り札と位置づけているものの、依然として韓国より外国人旅行者数は少ない。情報が増え、所得が増え、趣味や嗜好が多様化するメガトレンドの変容に対し、高度経済成長時代には有効だった団体旅行の観光産業モデルを脱却できていない。他国に比して観光コンテンツの面白さは欠けるものの、日本は自然、文化、料理、サービス、安全という観光資源が充実している。しかし、大手旅行代理店が航空会社・鉄道会社と連携して大量生産を行う「募集型企画旅行商品」が主で、地域から発想した観光商品が出てこない。旅行者を受け入れる地域が自ら商品を設計し、客の趣味嗜好に合わせて対応する「受注型企画旅行商品」への転換を図る必要がある。また、世界中に拠点を設置して日本を売り込み顧客を集めるインバウンド型営業の展開や、競争を推進力に、泊食分離や交泊分離によって客の自由と選択肢を増やす取り組みも有効である。


人口の減少に伴い内需が下振れする中でも、政策的に国民の安心と希望を確保し、健全な競争の中で、景気を牽引しうる諸産業の戦略的な成長と改革を促すこと――。
そのために、政治経済的なマクロ政策と併せて、潜在的な成長産業の可能性を蝕む利権に切り込む構造改革を推進し、肥大化する社会保障費をも吸収しうる成長戦略をいかに描けるかが重要となるのでしょう。


内閣改造後、ウィメノミクス地方創生など様々な政策を打ち出している安倍政権。
今後の動向について島田晴雄氏の講演会から最新の情報を得ることができるかもしれません