2014年の新語・流行語大賞にもノミネートされている「トリクルダウン」。
元々は「trickle-down=滴り落ちる」という意味で、
まず大企業等の富裕層が豊かになれば次第に庶民や貧困層にもその恩恵が波及するという経済理論ですが、アベノミクスが推進する新自由主義の代表的な考え方の一つとされています。

「消費税を導入したことによって、消費の回復が遅れている。遅れている理由は、消費者が守りに入っているという点があります。それから、名目賃金は上がって いるのに、実質賃金がついてきていない。つまり、企業収益が完全に好循環を回し切っていないというところです。トリクルダウンがまだ弱いということです。 だから、トリクルダウンを強くする。あるいは「ないんだ」ではなくて、収益を上げたところから還元していかないと、儲かっている人がため込んでいるだけ で、一切外に出しませんといったら、経済の回復などあり得ない。だから、トリクルダウンを速くするという課題や、実質賃金ができるだけ早くプラスになるようにしていくなど、そういう課題が残っている」 ――甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨(今後の経済財政動向等についての点検会合について 2014/11/14)

と、経済財政政策を担当する甘利明内閣府特命大臣が最近の記者会見で話していました。
消費税増税の一方で法人税を減税するのもトリクルダウンの一環に他なりません。
しかもその財源として外形標準課税(資本金や従業員数等の企業規模に応じた課税)を強化するとなれば、業績にかかわらず税金がかかるため、利益を生み出せていない企業の負担は増加し、更に格差が広がることも予想されます。

円安が進めば自動車などの輸出をメインとするワールドクラスカンパニーは潤い、
株価が上昇すれば金融商品に十分な投資を行える富裕層も潤う――。
こうしてトリクルダウンの上部に位置する少数の富裕層が景気回復を実感しうる一方、
物価上昇にともなう実質賃金の低下にあえぐ庶民が多数を占めているのが実情です。

以前に講演会レポートを紹介した経済評論家の三橋貴明氏は、
安倍政権が重視すべきはトリクルダウンよりも「トリクルアップ」であると説いています


「貧困層を支援し中間層化することで、経済成長率は却って高まる」
政府や財界の思惑を探るためにも三橋貴明氏の講演会はオススメです