前回に引き続き、森永卓郎氏の著書『年収300万円時代を生き抜く経済学』を紹介いたします。
アベノミクス解散に伴う総選挙を控え、森永氏には講演依頼が殺到しているのではないでしょうか。
森永卓郎 講演依頼
講演会でも経済展望やビジネス・経営論を中心にお話されます。
テレビでもおなじみの柔らかい口調で、分かりやすく解説してくれるのでオススメです。。。

それでは、名著『年収300万円時代を生き抜く経済学』の気になる中身を要約すると以下のとおり。

①政権と勝ち組エリート層の思惑:
90年代後半のITバブルによって一部の“勝ち組”にキャッシュが集中しました。
バブル崩壊以降、地価が急落する中で、その“勝ち組”が資金力を活かして不動産を安価に取得。
それまでの日本では、土地を担保にした間接金融システムがあったため、銀行も融資を行いやすく、企業経営は高い安定性を保ってきました。
不況下でも、銀行は中期的な観点から、担保の土地を競売に出すよりは少しでも収益の見込めるよう一部債権放棄の対応をとっていたのです。
しかし、竹中平蔵氏の「金融再生プログラム」によって短期間での不良債権処理を強硬に迫られた大銀行は、過剰債務にある大企業の不動産を吐き出すほか無く、それを資金調達能力に優れたハゲタカファンド等の”勝ち組”が絡めとってゆく構造になってしまいました。
後は時機が来たら金融緩和によってデフレを終わらせ(インフレターゲットの導入)、地価を吊り上げるこ とで“勝ち組”に莫大な利益が生まれるというカラクリです。
デフレは十分なキャッシュを保有している者ほど美味しい資産を獲得して更に利益を増やすことのできる弱肉強食の世界。
強者がデフレ時代に掻き集めた資産はインフレによって大きな利ざやを産むのでした。。。

②年収300万円時代

デフレが続けばいずれ物価以上に賃金水準が低下します。
政府が推し進めるようなアメリカ的な市場原理のシステムが浸透すれば競争は激化し、中流が消失する形で格差は更に拡大するでしょう。
これはレーガン政権時代に市場原理が強化されたことでアメリカに起こったのと同じ事態。
周知のとおりアベノミクスという造成語はレーガノミクスに由来しているため、何とも示唆的ですね。
ひいては年収格差が食や医療、子どもの学力差にまで影響し、9割が“負け組”に・・・
こうしたアメリカ型世界でいつ競争から脱落するかに怯えながら24時間働くエリートよりも、階級制の厳しいヨーロッパや不況下でも自殺者の少ないラテン社会のように、会社以外に一生付き合ってゆけるライフワークを見つけ、低所得なりに楽 しみながら人生を送る方が豊かだと森永氏は説きます。

③幸せに暮らす智恵と工夫:

デフレが続けば収入が減るのとともにリストラのリスクが高まり、たとえ緩やかなインフレに転じても成果主義の浸透で賃金上昇は物価に追いきません。
限られた収入を効率的に使うには、収支を見直す方法論や、予算管理と不測の事態に備えるリスク管理が必要です。

そこで森永氏は、住宅ローンを固定金利期間変動型にするのはインフレ時にリスクが大きい、保険会社の経営を危惧した生命保険の安易な解約は損をする、国民年金保険料の免除制度を活用するなど、生活を守るための具体的なノウハウを指南してくれます。
公的医療補助制度、出産補助制度、医療費や住宅取得時の控除、クーポンや株主優待、クレジットカード割引、金券ショップ、ポイント有効利用などについても例示されているので、積極的に取り入れてみてはいかがでしょう。

十年以上前に出版された本ですが、アベノミクスによってインフレに転じた現在の状況を鋭く言い当てているように思えます
森永卓郎氏の講演ではこうした的確な経済展望を伺えるので、機会があれば是非、聴講してみてください

追記:ある講演会主催者さんの情報によると、森永卓郎氏は講演料等に細かな決まりごとがあるようなので、講演依頼を検討されている方は講師派遣サイト等へ事前に確認しておくと良いそうです