先日の来日の模様が様々なメディアで取り上げられたトマ・ピケティ
講演やインタビューの中で、フランス語なまりの英語を駆使して格差拡大に警鐘を鳴らす姿はすっかりおなじみとなりました。
前回の記事では森永卓郎氏に解説して欲しいと書いて結んだのですが、
森永氏がピケティについてラジオで語っている音声がYoutubeに上がっていました。

<森永卓郎×阿川佐和子×大竹まこと:ピケティの経済理論と格差拡大>



森永氏によると、ピケティの主張は「8割」ほど正しく、その業績は素晴らしいとのこと。
森永氏もかつて研究機関で格差の研究に携わった際に、1年かけて様々な賃金格差をデーター化して分析する作業に当たられたことがあるそうなのですが、日本の30~40年間分のデーターを取るのに地獄を見たそうです。

しかしピケティは、まだ若いにもかかわらず、過去200年間のデーターを丹念に追っています。
当然、昔にさかのぼるほど作業は困難を極めるわけですが、ピケティはそれを一国にとどまらず世界20カ国を超える規模で行っており、その根性と努力には頭が下がると森永氏は評価されていました。
森永氏の若い頃は、「格差」というと上司と部下など労働者間の問題と捉えがちだったそうですが、ピケティはそれを労働者と資本家間の問題であると見抜き、労働者の範疇の外部で、金を金で動かしている人がいることに気づいたのでした。

ピケティの理論は、資本家が株や不動産や債権等の利ざやによって得る富の資本収益率は、常に経済成長率を上回る(r>g)というものです。
例外として資産価値が暴落した世界恐慌から高度経済成長期の間だけこの数式は逆転したのですが、サラリーマンの給料はせいぜい経済成長率分しか上がらないわけで、資本の収益率(4~5%)が経済成長率を上回れば当然格差は開いていくというごくシンプルな図式です。
もちろん経済成長率が高い状態が続けば格差は縮小しますが、人口も減り、途上国の発展もやがては鈍化する以上、それは現実的でありません。

そこで、資産に応じて課税を強める累進課税の資産税を導入しよう、というのがピケティの提言です。ただし、単独の国でそれをやると税率の低い国(タックスヘイブン)へ富裕層が流れるので、世界中でそれをやろうと主張しています。ピケティは「8割」正しいと森永氏が言うのはまさにこの部分で、この結論は現実的ではありませんよね。。。

森永卓郎氏は、ピケティの取った200年のデーターを見ると、世界恐慌による資産の暴落よって一時的に資本収益率が下がっているものの、全体の200年では資産の収益率は安定しており、成長率だけが上下している点に着目します。
そして、なぜそういう事態がおきているのか? その分析が行われていないと指摘しています。
(ちなみに、森永氏の仮説では、金持ちはお金中毒で、景気が良くても悪くても必ず一定率で資産を増やそうとし、経済成長率が低いとき=全体のパイが少ないときにも取り分を増やすために庶民の取り分が落ちるのだそう)

ピケティの説く累進課税については、勤労意欲をそぐもので経済を活性化させないとの批判が有りますが、これに対し森永氏は、活性化すべきは庶民なのであって、資産家ではないから問題ないと話されていました。

また、金持ちはお金中毒なので一旦逮捕して更正させるといい、とも

最後に森永氏は、ピケティの本は13万部売れているのに対し、最近の森永氏の本は3000部しか売れない。これが本当の格差社会だと嘆いておられましたとさ...
 
たった10分程の時間でこんなに面白いお話をしていただけるのですから、やはり森永卓郎氏の90分の講演はますます楽しみですね


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