アベノミクスの成長戦略の上で重要な位置づけを占める設備投資の増加。

早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の野口悠紀雄氏は、先月のダイヤモンド誌上連載記事の中で、日銀が推し進める異次元金融緩和の評価について、物価や株価ではなく、設備投資でなされるべきと、そのデーターを分析しています。

①設備投資は、リーマンショックで大きく落ち込んだものが2010年には回復したが、その後はあまり増加していない。
②最近時点での設備投資額は、リーマンショック前よりかなり低くなっている。(2007年:56.2兆円⇒2010年:38.3兆円⇒2014年:39.9兆円←消費増税前の駆け込みの影響)

すなわち、異次元緩和措置は設備投資を増加させていないのです。
「この状況は、株価がリーマンショック前のピークを超えたのと対照的だ。株価は、実体経済に関する企業の見通しを正しく反映していないと言わざるを得ない」。

では、金利が低下したにもかかわらず、なぜ設備投資が増えないのでしょう?
その答えとして、野口悠紀雄氏は「売上高が増えないからである」と述べています。


法人企業統計において、全体的に営業利益が回復しつつある一方で(2007年:56.0兆円⇒2014年:54.7兆円)、売上高はリーマンショック以降、ほぼ継続して減少しているとのこと(2007年:1524.8兆円⇒2014年:1329.4兆円)。
つまり、設備投資は利益よりも売上高による影響を受けており、いくら金利が低くても売上高が増えない状況で設備投資を行えば過剰生産に陥ってしまうため、政策として重要なのは金利低下や法人税減税ではないのです。
そして、日銀の異次元金融緩和は売上高の増加にほとんど寄与しておらず、今後も売上高とともに設備投資が減る可能性が大いに有ります。

ここで野口氏は、製造業と非製造業の動向の差に目を向けます。
製造業の売上高と設備投資はリーマンショック前に比べて落ち込んでいるのに対し、非製造業は一定の水準を保っています
ここから、売上高の減少は人口減少によるのではないことが分かります(総人口の影響は製造業にも非製造業にも同じように影響するはずのため)。
そして、いまや設備投資の規模で見て、非製造業は製造業の倍近くになっているとのこと。
この両者の差はひとえに、「製造業が国際競争にさらされている」ことによると野口氏は指摘します。

「設備投資を増やしたいのであれば、製造業を増やす方策を考えるべきだ。非製造業の売上高は、円安や金利ではなく、個人消費の見込みに影響される面が強い。だから、実質消費を増やすことを考えるべきだ。
 実質所得が増えれば実質消費は増える。しかし、実際には金融緩和で円安になり、それが物価を高めて実質所得を減らしてしまっている。理論的には資産効果があり得るが、消費全体の動向を決めるものは、実質所得の動向である。いまの日本で必要とされるのは、実質所得を増加させる政策だからだ。そうした観点から、金融緩和政策の是非が、根本から問い直されなくてはならない」


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