先日、日本とヨーロッパ間における経済連携協定(EPA)が妥結したことが報道されました。

参考:日本とEU、EPA協定で大枠合意 多品目の関税撤廃へ

具体的な内容はまだこれから詰めていくにせよ、日本とEU間で自由貿易が促進されることは世界的に大きなインパクトを持ちます。

安倍外交の実績として今後も歴史の教科書に載るでしょう(良いか悪いかは別として)。


そもそも、経済連携協定とはなんなのでしょうか?


経済連携協定(EPA)とは


経済連携協定(けいざいれんけいきょうてい、Economic Partnership Agreement[1]EPA)とは、自由貿易協定(FTA)を柱として、関税撤廃などの通商上の障壁の除去だけでなく、締約国間での経済取引の円滑化、経済制度の調和、および、サービス・投資・電子商取引などのさまざまな経済領域での連携強化・協力の促進などをも含めた条約である。
Wikipediaより

経済連携協定は自由貿易協定を包括するもの、経済取引など全体的なやり取りを円滑に、強固にするためのものなのですね。


自由貿易協定と言えばトランプ大統領がTPPから脱退することを宣言し、大統領令に署名したのも今年2017年。

今回、大筋合意したTPP協定の参加11か国の人口は合わせて約5億人(世界の約6%)。 
GDP=国内総生産の合計は、日本円にして約1100兆円(世界全体の13%)になる経済連携協定です。

しかし、アメリカが離脱する前のTPPは、人口が約8億2000万人(世界の約11%)。GDPは約3200兆円(世界全体の約37%)だったため、規模は大幅に縮小しています。

一方で、日本はことし7月にEU=ヨーロッパ連合のEPA=経済連携協定で大枠合意しています。日本とEUのEPAの規模は、世界全体のGDPのおよそ28%と、大型の経済連携協定となっています。

参考:NHK NEWS WEB 今さら聞けないTPP TPP11 新協定の規模と通商戦略

アメリカ参加のTPPは37%と、日本にとってみれば関税なしで自動車を輸出できる超巨大市場が出来るはずでした。

アメリカは国内産業の防衛のため、脱退したわけですね。

これが各国から経済を停滞させるとして懸念視されている保護貿易なのですが、EUとEPAを結ぶことで世界全体の28%の市場が出来るということでニュースになっているのですね。

もちろんそれ以外にも様々な物品がやり取りされるのでしょうが、今現在EUと日本はどのようなものを輸出入しているのでしょうか。

■日本の主要輸出品目
・自動車(15.3%)、自動車部品(5.8%)、金(3.5%)

■日本の主要輸入品目
・医薬品(14.5%)、自動車(11.4%)、免疫血清および免疫産品(3.5%)JETRO


自動車を輸出し、医薬品と自動車を輸入しています。

日本からしてみれば安く自動車を売り、安く農産品を仕入れることができれば経済成長します。

国内の関税撤廃の争点は日本の一次産業が壊滅してしまうのかどうかというところ。

農業や酪農、畜産関係の人々は安易なTPPに反対しています。

元々の自民党は農家の支持が厚かったために、農家が反対する施策を取りませんでした。

しかし安倍政権は経済界との連携を打ち出してきています。


「自動車」が日本の屋台骨だからですね。


日本車の今後

さて、ここで日本車は果たして海外で今後も売れるのか?という疑問が出てきますね。

トヨタを始めとした日本メーカーはこれからも海外で収益を上げられるのでしょうか。


一般社団法人日本自動車工業会によれば
2年連続で増加した四輪車輸出台数
2016年の四輪車輸出台数は、前年より1.2%増加して463万4千台となりました。乗用車は前年より3.7%増加して411万8千台、一方トラックは前年より17.7%減少して38万4千台、バスは前年より6.8%減少して13万2千台となりました。

欧州、アジア、北米、大洋州向けが増加した四輪車輸出台数

2016年の四輪車輸出台数を仕向地別で見ると、欧州向け(11.0%増)、アジア向け(10.9%増)、北米向け(8.6%増)、大洋州向け(0.7%増)は前年より増加しましたが、中近東向け(26.9%減)、アフリカ向け(20.1%減)、中南米向け(5.0%減)は前年より減少しました。

ここ数年輸出台数は伸びており、特に欧州とアジア向けが伸びています。

販売台数もやはり伸びています。
参考:トヨタ欧州販売、11%増の52万台と2年連続で増加 2017年上半期


なぜ伸びているのか調べてみると、主力であるハイブリッド車の売り上げが伸びていること以外にもう一つ言及した記事がありました。


参考:トヨタ、欧州市場で販売急増。なぜか?


これによれば世界ラリー選手権に参加しているTOYOTA GAZOO RACINGの好影響が出ているとあります。


世界ラリー選手権はF1とは異なり、オフロードも走りまくるモータースポーツ。

日本ではあまりなじみがありませんが、パリダカールラリーという名前はよく耳にしますね。

WRCに復帰したトヨタの活躍により、それに共感した人々がトヨタ車を買いに走っているというのです。

この理論でいくと、販売台数を伸ばすにはラリーで好成績を残し続ける必要があるわけですが。。。


EPAに視点を戻すと、今後欧州で日本車にかかる関税が撤廃される可能性があります。
日本車にかかっている税金がなくなる分、販売価格が安くなるため競争力が高まることが期待されます。


EPAとWRCの相乗効果で売り上げを伸ばし続けることができるでしょうか?

他メーカーもWRCに乗り込んでくるかもしれませんね。


EV化の波


トヨタは現在のEV「ブーム」を冷静に見ています。
開発競争に遅れているという見方もありますが、トヨタは完全EVの普及には疑問を投げかけています。

なぜなら世界で販売するうえで、充電ステーションの普及がボトルネックになると考えているためです。


アフリカや中国では車の販売台数が飛躍的に成長していますが、それは化石燃料のコストの低さがあってこそ。

充電がもっと手軽になり、充電時間もガソリン並みになるまでにはまだまだ時間がかかりそうです。
それまではハイブリッド車が現実的であるとトヨタは見ているのですね。


とはいえ、CESでは豊田章男社長がこのように述べています。

現在、トヨタは90か国以上で37車種の電動車を提供しています。2020年前半までには全世界で10車種以上のEVを提供し、2025年までには全てのレクサス車・トヨタ車にEVあるいは電動車のオプションを設定いたします。
昨今、多くの人々が、電池技術、あるいは電気自動車を話題にしています。
一方でそれほど話題になっていないのが、今日米国では電気自動車の販売台数が1%にも満たないということです。お客様の電気自動車への関心を高めるためにすべきことはたくさんあります。
そして、私たちは、全固体電池の開発にも取り組んでいるのです。この技術は、電池をより小さく、そして軽くでき、何よりお客様と自動車メーカー双方にとってより手軽な価格にすることができると考えています。

【CES 2018】 豊田章男社長によるトヨタ プレスカンファレンス(スピーチ全文)



電池の開発、そしてモビリティ企業としてプラットフォーム開発を進めるとのこと。

これはドローンや小型運搬機器の開発にも活かせる技術ですから、自動車だけでなく今後は様々な分野でモビリティを売っていきたいと考えているのではないでしょうか。


テスラなどと違い、ハードウェア製造には一日の長があるTOYOTA。

バッテリーの開発が肝となるのでしょうか。