年間聴講100件超! 講演会マニアが経済の明日を占うブログ

1年間に100件超もの経済に関する講演を聴講している講演会マニアが、見聞きした講師の話を通じて日本経済の展望を語るブログです。

カテゴリ: 講師著書紹介

前回を踏まえ、今回はいよいよ竹中平蔵氏のピケティ評をご紹介いたします!

ダイヤモンド誌の記事の中で竹中氏はまず、「ピケティの議論は精緻ですが、資本収益率も、資本が積み上がればどこかでサチュレート(飽和)する。 単純に増えていくことはないんじゃないですか。 ただピケティは、今、世界で起きている問題について、非常に重大な警鐘を鳴らしています。 世界でグロー バル化が進み、新たなフロンティアが生じていますが、そこに入れるかどうかで、絶望的な格差が生じている」とした上で、『21世紀の資本』への支持率は70%と答えています。

さらに、日本でも規制緩和に取り組んで1人当たりのGDPを引き上げる必要があり、同時に政府は貧困の実態調査に乗り出すべきとのこと。
そして、とりわけ30代における格差が深刻であるとして、以下のように述べられています。
ちょっと長いのですが、引用しますね。

「格差を考える上で重要なのが30代です。消費税増税後、GDPもマイナスになりましたが、中でも30代の消費マインドが大きく落ちている。就職氷河期を経てきた彼らの多くは、自身が望んだ仕事に就けず、技能も育っていないし、所得も低い人が多い。
 要因の一つは、正規と非正規社員の格差です。今、非正規の割合が年々増加している。これは競争ではなく、制度によって生まれた格差です。だから、正規も非正規も同一条件にすればいい。オランダはそれを実現しました。
 なぜ日本でできないのか。一部の大企業の正社員が守られすぎているからなんですね。彼らの労働組合の組織率は2割を切っているのに、労働者の代表として政府と政策の議論をしている。既得権者たちが今の制度を守っているのです」


ここで竹中氏は、非正規社員の待遇改善というよりも正規社員の待遇改悪を指向しているようです。
前回もご紹介したように、人材派遣大手・パソナグループの取締役会長でもある竹中氏は、派遣法の規制緩和を推進しています。主婦を中心とする女性や高齢者、障害者の労働のありかたについて多様性を掲げつつ、非正規社員への間口を広げる考えです。

もちろん、かつて藻谷浩介氏が『デフレの正体』で説いたように、日本では少子化・高齢化にともなう生産年齢人口の減少が内需の縮小につながっている以上、子持ちの主婦層がある程度自由に働ける環境を整えることで、消費やGDPは改善されるはず。
一方で、正規社員の待遇を下げ、若者を中心として安定に欠く非正規社員が増えてしまえば、たとえ主婦がパートで働きやすくなったとしても、経済的に安心して子どもを産み育てられる家庭環境が整わず、少子化は加速するに違いありません!

ピケティが『21世紀の資本』で明らかにしたのは、経済成長率が低い時こそ、資本家が投資等によって得る収益率の割合が増えるということ。日本でも最富裕層の10%が国民所得の実に4割を占めており、竹中氏が熱心に説いている上記のような政策は、ピケティのいう格差縮小や富の再分配に対する根本的な解決にはなりません。

トリクルダウン理論によって注がれた富は大企業や投資家といった富裕層が存分に享受しており、下層へ滴り落ちるどころかむしろ、海外の投資家へ吸い取られる一方です。
こうして最富裕層の富は蓄えられ、むしろ増え続ける中で、残ったカスカスの富を、下層においてのみ平均化するといった方向に進んでいるように思えてしまいます。

社会保障費確保のために消費増税が実施された一方、いつの間にやら2015年度の軍事費が過去最高の5兆円 となりました。安倍首相は衣の下の鎧が丸見えの状態で、自衛隊内部からは文官統制を廃止する法案作成の危険な動きも見られる中、貧困者の就職先として、自衛隊が大きな選択肢にならないような社会を切に望みます。

さて、なるべく中立な立場から始めようとした本ブログですが、このところどうしても現政権に対する疑問を書き連ねてしまいがちなので、「利益相反」といわれないように気をつけて参りますね


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 <↓パソナ会長の肩書きは出さない所がポイントなんでしょうか・・・>
竹中平蔵 ピケティ

これまで氏、氏、氏がそれぞれピケティ『21世紀の資本』をどのように受け止めているかをお伝えしてきましたが、これから2回に渡り、同じくダイヤモンド誌のピケティ特集から竹中平蔵氏のコメントを紹介いたします!

そこで今回はまず、竹中氏をめぐる様々な背景を整理しようと思います。

竹中平蔵氏といえば、かつて小泉政権時代に竹中プランと称される不良債権処理を推し進め、構造改革の陣頭指揮をとったことで有名ですが、その流れを汲む現安倍政権下でも、産業競争力会議や国家戦略特別区域諮問会議のメンバーに名を連ね、アベノミクスの一翼を担っています。
今や経済関連の講演会講師としては、最も“大物”といえるのではないでしょうか。
慶應義塾大学の総合政策学部等で教鞭をとるほか、人材派遣大手・パソナグループの取締役会長を務めていることもよく知られていますね。

民間の人材派遣会社の現会長が、雇用期間制限をはじめとする派遣法の規制緩和や、労働移動支援助成金の引き上げ(従業員の転職・再就職支援に協力する企業への補助金を増やすという点で、間接的な正社員のリストラ促進策とも見られています。従来は従業員の転職が成功した場合にのみ企業へ40万円が支給されていましたが、この上限を60万円に引き上げるとともに、転職できない場合でもその転職先探しを人材サービスなどの再就職支援会社に依頼するだけで10万円の補助金が出るようになり、人材サービス会社が潤うことになりました)など、国の雇用政策の意思決定に関与しているという実情については、「利益誘導」「利益相反」(中立の立場を超えて一方の利益を犠牲にし、もう一方の利益につながるよう便宜を図ること)との批判も多いようです。

もちろん本人はあくまで有識者として会議に参加していると、この「利益相反」を否定していますが、
例えば第4回産業競争力会議において、「労働移動型の解雇ルールへのシフトは大変重要。判例に委ねられているのは、ルールとして不明確であり、明文化すべき。金銭解決を含む手続きの明確化することが必須である。早急に議論を煮詰めていくことが必要である。雇用調整助成金を大幅に縮小して、労働移動に助成金を出すことは大変重要。是非大規模にやって欲しい。今は、雇用調整助成金と労働移動への助成金の予算額が1000:5くらいだが、これを一気に逆転するようなイメージでやっていただけると信じている。」と発言し、実際に上記の労働移動支援助成金が2億円から300億円にまで一挙に引き上げられたことで、再就職を支援する人材サービス会社へ巨額の税金が流れたという経緯があります。

ネットでも三橋貴明氏とのバトルが話題となりました。

また、パソナといえば、記憶に新しいASKAさんの事件でも浮き彫りになった政官接待のゴニョゴニョゴニョ・・・ ゴニョゴニョゴニョ・・・

そんな竹中平蔵氏は、ピケティの説く格差拡大についてどのように見ているのでしょうか。

また、ピケティが池上彰氏とのインタビューでも語っていたように、「日本では労働市場の仕組みが若い人に厳しい。パートや非正規の人が増えており、待遇が良くない。日本でも、欧州でも、若い人に希望を与える政策をとることが重要です」といった若者の雇用のあり方について、常々「正社員が守られすぎている」と説いてきた竹中氏がどのような意見をお持ちなのか、気になりますよね。


どうも現政権の政策は、格差の上でボトムアップをはかるというよりも、中間層を叩き落すような方向に進んでいるような気がしてならないのですが、ここまででかなり長くなってしまいましたので、竹中氏のピケティに関するコメント詳細は次回に改めさせて頂きます!
I'll be back soon


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ピケティ『21世紀の資本』については、講演会でもおなじみの様々な評論家・アナリストの方々が発言されておられるようですね。
これまで紹介して来た「週刊ダイヤモンド」のピケティ特集の中でも、
作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏が鋭い分析をされていました。

佐藤氏はピケティついて、「自由だ平等だといわれながら、実は一定の大金持ち、投資銀行のディーラーなんかがもうけている構造を解明したいという正義感があったのだと思います」としながら、以下のように述べています。

この著者への私の支持率は90%。過度な数学を使って読者の目をくらます現在主流の経済学を用いず、読者の検証可能なデータを使って論じた点は、知識人として誠実です。論理の飛躍や幻惑もありません。
ではなぜ100%ではないのか。それは、国家に対する認識が甘すぎるから。国家が個人の資産に手を付けるようになれば、必ず暴走すると思います。国家による経済統制は、国家資本主義や国家社会主義に近い。非常に窮屈な世の中になりますよ。
それに資産課税を強化すれば、本当の超富裕層は、あらゆる手段を使って資産を隠したり、キャプタルフライトしたりする。
そもそも、ものすごい金持ちというのは、国家と仲がいいんです。ロックフェラー3世の本に、富を維持するためには、大衆にねたまれないように寄付をしろ、国家にできない外交をしろと書いてある。
つまり、国家と超富裕層は持ちつ持たれつの関係です。政府もここには手を突っ込めない。ピケティのような議論がいずれ出てくることを想定して、富裕層はすでに手を打っているわけです

情報の裏を読むプロ中のプロならではの分析ですね
前にご本人がどこかで語ってらしたのですが、何でも佐藤優氏は原則として講演は無償で行っていらっしゃるのだとか。
作家はあくまで書くことが生業であって、講演会で講師として多額の謝金を受け取っていくあまり書くことがおろそかになってしまった作家を沢山知っているからだそうです。
新党大地の勉強会(?)でお話になっているのを聞いたことが有りますが、講演会では時事問題(スノーデン事件の頃でした・・・)について、その背景から問題の本質、今後の展望まで非常に分かりやすく解説していただけます。
数多くの雑誌連載を持ち、執筆を重ね、圧倒的な読書量を保ちつつ、新聞を初めとする情報収集にも余念ない佐藤優氏の恐るべき仕事術は、「東洋経済」誌上で紹介されています

( ↓ 佐藤優著 『いま生きる「資本論」』)

佐藤優

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前回もご紹介した「週刊ダイヤモンド」のピケティ特集で、池上彰氏がインタビューを行っています。
池上氏はそのインタビューの成果として「若い人と民主主義のために書かれた本だと確認できた、これが最大の収穫です」と述べられています。

気になるアベノミクスの政策については以下のようなやり取りがありました。

池上:アベノミクスでは金融緩和によって実質金利をさらに引き下げることで何とか経済を良くしようとしていますが、これをどう評価しますか?

ピケティ:もしお札を刷ってさらにマネーの供給を増やすと、資産価値のバブルを引き起こしやすくなる。株価を押し上げることにはなりますが、格差が広がる恐れがある。はっきりと有効かどうかを答える自信は有りませんが、いずれにしても税制を変えるより手軽という意味で短絡的な手法だと感じています。

ピケティは富の最分配を促すべく資産に応じた累進課税の重要性を説いており、消費税については「あまり当てにすべきではない。消費税は累進性がなく、低所得層にしわ寄せがいきます。もともと貯蓄の少ない層に税をかけることで消費を抑えかねません。あまり、良い税ではないですね」とも断じています。

そしてこのインタビューは以下のように結ばれています。

池上:これまでお話を伺ってきましたが、本当に若い人たちのことを考えているのですね。

ピケティ:日本でも欧州でも、理由は違いますが、若い人の方が親の世代に比べて生きるのが難しくなっています。欧州では若い人だちの失業率が高く、これが社会に緊張感をもたらしています。日本は労働市場の仕組みが若い人に厳しい。パートや非正規の人が増えており、待遇も良くない。日本でも欧州でも、若い人たちに希望を与える政策を取ることが重要です。

池上:まさにこの本が民主主義の本であることを確認できました。今日はこれが収穫です。ありがとうございました。

全てを踏まえ、池上氏によるピケティ『21世紀の資本』の支持率は80%とのこと。

一方で、『構造と力』の浅田彰氏が指摘するように、「マルクスが『資本(論)』で資本主義のメカニズムを原理論的に説き明かし、資本主義を乗り越える方向を示したのに対し、ピケティの『21世紀の資本(論)』は、資本主義下で(戦争の時期を除き)格差が拡大する傾向にあることを統計から現象論的に実証し、税制によるその是正を提案するだけ」(憂国呆談という部分は否めません。
ピケティを英雄のようにもてはやす必要はなく、彼が警鐘を鳴らす格差拡大の課題に対し、それを解消する具体的な政策こそが求められているのだと思います

池上彰 ピケティインタビュー

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今週号の「週刊ダイヤモンド」は満を持してピケティを特集しています。
池上彰氏や佐藤優氏、前回の記事でとりあげた森永卓郎氏などが、
ピケティへの支持率(その主張が正しいと思う割合?)が何%かを述べていて面白いです。
ピケティ

池上彰氏によるピケティ『21世紀の資本』の重要なポイントは以下の3点。

①おかしい!という一般大衆の思いを見事に説明してくれる。
アベノミクスの範ともいえるレーガン政権(レーガノミクス)以来、
アメリカでは「トリクルダウン」(まず富裕層を豊かにすれば、その富はおのずと庶民へ滴り落ちるという考え方)が信じられてきました。しかし、現実は決してそうはならず、最富裕層1%が国全体の所得の20%を占める状況になってしまったのです。
2011年にアメリカの若者たちが起こしたウォール街占拠デモに象徴されるように、「おかしい!」という大衆の漠たる思いを経済学の観点から理論的に支えてくれる本として、ピケティが支持されているのです。

②理論のマルクスとデーターのピケティには意外な共通点がある。

経済学を代表する固有名をあげるとすれば何を措いても『資本論』のマルクスですよね。
資本主義への危機感に呼応して生まれた共産主義の礎となったマルクスですが、
その根底には、当時あまりにも政治的になっていた経済学への批判がありました。
そしてピケティも、数学化して社会の実態とかけ離れてしまった経済学への批判を出発点に、
むしろ今こそ政治経済学を復権させるべきとの思いを抱いています。

③「r」(資本収益率)は「g」(経済成長率)より大という目から鱗 理論より行動を促す

ピケティのチームは税務当局の納税記録に着目し、世界20カ国以上のデーターを過去200年以上にわたって収集するとともに、その分析手法を世界に公開しました。
池上氏はピケティの「r>g」という不等式について、以下のように要約しています。

「資本収益率とは株や不動産などあらゆる資本から生み出された平均収益率。18世紀以降はおおよそ4~5%で推移してきました。一方、国民所得の伸びを示す経済成長率は長期的には1~2%にとどまる。資本によって得られる収益は、働く人の賃金の伸びを上回り、格差が自然と広がっていくことを明らかにしたのです」


そして、かつての経済学者なら、なぜ「r>g」となってしまうのかについて精緻な理論を組み立てようとするところ、ピケティは「その理由は分からない」とした上で、議論と行動を促しているところが特徴的だと見ています。

ピケティについて池上氏は記事の中で、「私の『21世紀の資本』に対する支持率は80%でしょうか。データや歴史分析の知見を使い、世の中を良くしていこうよ、さぁここからは格差を減らすための行動をしなければなりませんよ、という彼のメッセージをきちんと受け止めるべきだと思います」と締めくくっています。

これだけ世間の話題を集めているトピックだけに、『21世紀の資本』については、池上さんの講演会でも分かりやすく解説してくれると思いますよ



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