年間聴講100件超! 講演会マニアが経済の明日を占うブログ

1年間に100件超もの経済に関する講演を聴講している講演会マニアが、見聞きした講師の話を通じて日本経済の展望を語るブログです。

タグ:アベノミクス

選挙のたびに恒例となっている池上彰さんの選挙特番(@テレビ東京)
政治家の急所に舌鋒鋭く切り込むスタイルは、「池上無双」と絶大な支持を集めています。
池上さんならではのマニアックな政治家の紹介も人気ですね。
(前回の模様をお伝えしている過去記事はコチラ⇒「人気講師・池上彰氏が斬る2014年総選挙」

今年は選挙権が18歳にまで引き上げられ、若年層の投票率がどれくらいになるのかも注目されていることもあり、ゲストは「峰竜太、宮崎美子、浅香唯、高橋みなみ、小島瑠璃子、杉山セリナ」といった面々で、若者を意識した構成になっているようです。

今回も気になる池上さんのコメントをいち早くご紹介してまいります!(随時更新)

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まずは冒頭、自民党の稲田政調会長に、(マニフェストの一番最後に回した)憲法改正について、議論を深めるべきというのであれば、そもそももっと国民に主張すべきではなかったかと追及。
加えて、都知事をはじめとする政治と金の問題について、制度に問題があるのでは?と池上氏が噛みつくものの、基本的には政治家の資質の問題で現行の制度のままでも十分とする稲田政調会長に、スタジオでも「もやもや」とした空気になりました。

また、毎度おなじみ小泉進次郎氏の応援演説にも密着。アベノミクスと異なる道を示しつつあると分析するとともに、永田町は嫉妬の多い世界のため35歳という若さもあって早々に大臣就任を受けることはなく、2020年以降をにらんでいるのではとコメント。

自公の連立与党が過半数の議席を獲得し、改憲勢力が2/3に迫る中、池上さんは今回も事前取材をかねたバスツアーで創価学会本部に乗り込み、政教分離の憲法20条の問題や、池田大作名誉会長の個人崇拝が進
んでいるのでは?と問いただしていました。
また、福岡で議席を獲得した公明党の高瀬弘美氏には、自身も創価学会員なのかと確認したうえで、出身である外務省に創価学会員が多いんですねとチクリ。

そして、池上さん自民党を支持する日本会議にも突入
安倍首相や麻生財務大臣、菅官房長官など日本会議の主要メンバーと神道政治連盟の主要メンバーが重なっていることを指摘。
そこに櫻井よしこ氏などが共同代表を務める「美しい日本の憲法をつくる国民の会」がゆるやかに連帯しながら、3団体で憲法改正を目指していると解説。
ちなみに当選を果たした三原じゅんこ氏が「神武天皇の建国からの歴史を受け入れた憲法を作りたい」と言っているのに対し、それはどういう意味なのか?神武天皇は実在した人物と思っているのか?と質問し、「そう思ってもいいのではと思っている」という回答に、教科書でも神話の中の存在となっているはずとブッタ斬ってました。
やはり池上さんに切り込まれると、にわか仕込みの浅知恵は露見してしまいますね。。。

さらに共産党の民青(日本民主青年同盟)や民進党の支持団体で組合員680万人をほこる連合(日本労働組合総連合会)にも足を運ぶ一行。
なかなか他局では切り込めない聖域にどんどん踏み込んでいました。

その後も、゛SPEED当選”を果たした今井絵理子氏には、選挙中に米軍基地問題に触れていなかったのでは? 立候補して、はじめて沖縄の問題について考えはじめたんですか? と勉強不足に疑問符を投げかける池上さん。
同じく新人の朝日健太郎氏も同様に、、やりたいという政策がありながら具体的な筋道については当選してから勉強しますという姿勢には、大いに疑問を示していました。

そして気になる安倍首相へのインタビューですが、
まずは目標としていた与党過半数の勢力を得て安堵の表情を見せる安倍首相。
アベノミクスを進めるという点で一定の信任を得られたとの認識を示しました。
そこで、池上さんは選挙中に安倍首相が憲法改正について触れてこなかった点を追及。
これに対し安倍首相は、どの条文をどのように変えるかという議論が定まっていない状態で国民に問うことはできないと考えているとの回答でした。
本当は議員定数削減の問題などにも切り込んでほしかったのですが、時間も限られていて消化不良のままに終わっています。


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前回の記事でも紹介しましたがイギリス国民投票によるEU離脱の衝撃は大きく、行く先々の経済講演会で、この先の展望について質問が飛んでいました・・・。

そんななか!なんと!離脱派の公約違反が明らかになりました
これまで、離脱をすればイギリスがEUに払っている高額な拠出金(週当たり3億5千ポンド=480億円ほど)が浮くため、財政難にあえぐ国民の保険サービス拡充に出資できると主張していたはずなのですが、実際の拠出金負担がその半分以下で1億数千万ポンドだったことが判明し、独立党のファラージュ党首は「そんなことは言ってない」とシラを切り始めましたΣ( ̄ロ ̄|||)

これから先は大規模な経済混乱が予測されるため、勝利した離脱派もさすがに性急な手続は避けるべきだと慎重な姿勢をのぞかせているのですが、EU側からは「遅滞があれば、不透明感を不必要に長引かせる」と迅速な離脱交渉を促されています。
また、離脱派はEUに留まらなくても各国とFTA(自由貿易協定)を結べばいいと主張してきたのですが、ドイツのメルケル首相は、確かに移民をはじめとするEUの義務は免除されるものの、ヒト・モノ・カネの移動の自由といったこれまでの特権も認めないという厳しい姿勢を見せており、当然ですがイギリスの“いいとこ取り”は断固として許さないと早くも牽制されてしまいました

キャメロン首相が10月までの辞職を表明しているため、保守党内で離脱交渉を行う次のリーダーを選ぶ動きが加速しているのですが、ここにきて離脱派リーダーを務めてきた前ロンドン市長のジョンソン氏がなんと不出馬を宣言。
その動きについて、元外交官・作家の佐藤優氏は「無責任極まりない」としながらも、経済が大混乱することは明らかで、どうせ首相を引き受けてもボロボロになって短期で退陣することになると分かっているため、あえて火中の栗を拾わないようしたのだとラジオで指摘しています。
佐藤優

何でもイギリスでは、アイルランドとの二重国籍の資格を持つ多くの人々が、アイルランドへパスポート申請を行い始めているそうで、それほどまでに庶民の危機感は募っているのだとか。
また、よく報道されているように、EUに留まりたいスコットランドでは独立の動きが再燃しています(そもそも住民投票でイギリス残留が決まった後の下院選挙ですら、すでに独立派が多数を占めています)。
しかし、いくらスコットランドがEUに留まりたいと言ったところで、EU側は独立国家でない以上、加入は認められないという回答しかできません。
それを受けて、スコットランドでは、「独立国家じゃないからEUに加盟できないんだったら、独立国家になっちゃおう(・∀・)」と、戦略的にイギリスからの独立の動きを進めているようです。

富裕層の多いロンドンに対して、貧困層の多いスコットランドでのこうした動きは、ウェールズや北アイルランドの民族意識を強めかねず、さらにはスペイン(バスクやカタロニア)やベルギー(フランドル)といった民族間対立を抱える国家にも飛び火する可能性すら帯びています。
かくして世界の各地では、大民族と小民族との抗争に経済格差が絡み、大きな衝突が生まれようとしているのです。
(ちなみに、日本で同じ構造を持つのは沖縄ですね・・・)

佐藤氏によれば、イギリスは農産物をフランスから、工業製品をドイツから輸入していて、何で儲けているかと言えば“マネー”に他ならないとのこと。
(イギリスのEUへの輸出は20兆円ほど、EUからの輸入は30兆円ほどです)
もし、金融帝国として栄えてきたイギリスがこれまで特権として享受してきたEU内でのヒト・モノ・カネの移動を制限されれば、シティ(ロンドンの金融街)がエジンバラ(スコットランド)に移動することだってありえます。
もしスコットランドが本当に独立してしまえば、イギリスは北海油田を失い、高価なアトランティック・サーモンの収益を失い、グラスゴー近郊にある原子力潜水艦基地も移転しなければならず(引受先もない…)、そうなれば安全保障上の問題すら出てくるそうです。
しかも、現実として安価で危険な労働の多くを担っている移民の流入を止めてしまえば、イギリス製品の競争力はおのずと落ちることになり、ドイツ製品にますます大きく水を分けられてしまいます。

こうして合理的に考えるとEUを離脱していいことは何もないもかかわらず、自分たちの生活がよくならないのはEUのせい(ドイツの一人勝ちにつきあっている)という離脱派の「心情」を止めることができなかったのは、政治の敗北に他なりません。

日本への影響について言えば、佐藤優氏はイギリスのEU離脱を「アベノミクスの終わりの始まり」と形容し、例えばマーケットにおいて離脱派勝利の混乱が早くも収束しつつあると楽観する動きについて、とても危険な兆候だと警鐘を鳴らしています。
佐藤氏によれば、例えば自身が背任の罪でかつて逮捕されたときも、ソ連が崩壊したときも、あるいは一般に会社が倒産するようなときも、人間は危険に直面すると楽観に傾きやすく、根拠のない脆弱な楽観論に依存している状態は極めて危険なのだとか。
9月まで情勢がどうなるか見えないなか、マーケットの不安が高まれば株価は15000円を割り、ドル円も二桁に突入すると分析していました。

奇しくも先の伊勢志摩サミットでは出鱈目な理由を持ち出して「リーマン級」と世界経済の危機をあおり、各国で顰蹙を買ってしまった安部首相ですが、今となっては全く違う理由でリーマン以上の危機に瀕することになりそうですね・・・。
タイムスケジュールとしてイギリスの正式なEU離脱までには手続上2年ほどの時間を要すので、これから急激な変化があるわけではないのですが、投機筋ではポンドが売られ、ユーロが売られ、かといってアメリカもドル高を進めるような動きはなく、余計なことにかかわっていないことで相対的に「安全」とされる円やオーストラリアドル、ニュージーランドドルといった通貨が買われることになるでしょう。

グローバリゼーションの恐ろしいところですが、円安誘導と株高(豊富な年金資金を用いた株価の下支えもありますが…)に支えられえてきたアベノミクスは、外国発の経済危機に飲み込まれようとしています。
自動車をはじめとする日本の輸出関連企業は大きな打撃を被ることが予想され、当然ながらその株価も値を下げていくはずです。多くの企業が想定している為替レートは1ドル=110円ほどなので、90円台に入れば大きな誤算となりますね・・・。
さらに、アメリカでトランプが大統領になってしまえば、日本車には高額な関税が待っています

ちなみに佐藤氏は、そもそも自国の通貨が強くなることを恐れてはいけないのだと言います。
そして、かつての日本では円高になってもそれに打ち勝つだけのイノベーションを生み出すことができていたものの、数学をはじめとした力が弱まり、世界的なイノベーションの流れにもはやついて行けなくなってきていると指摘していました。


何はともあれ、こうした株安の状況は富裕層にとってはチャンスですね。
特に金融資産3億円以上を有するような超富裕層は、投資信託に資金を注ぎ込み、値段の下がった安定株を買うことで、資産を10年で倍にすることも可能とのこと。
というわけで、この先は更なる格差拡大が待っていると佐藤氏は睨んでいます

(ちなみに、佐藤優氏の講演は情報の裏側に迫るスリリングな内容が多く、いつも興味深いです


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ついに安倍首相は消費増税再延期の意向を固めたと、5/26付の朝刊各紙が報じています。
そして、5/28夜には消費税10%への引き上げ時期について2019年(平成31年)10月まで2年半再延期する方針を麻生財務大臣らに伝えたと産経新聞が速報を出しました。
消費増税延期


26日より開幕となった伊勢志摩サミットで現在の世界経済を取り巻く状況が「リーマン・ショック前に似ている」と言及。
かねてより「リーマンショックや東日本大震災クラス」のような事態が起こらない限りは消費増税を行うと表明していただけに、消費増税を再延期するための見苦しい口実として「リーマン・ショック前に似ている」という表現を用い、

「リーマン・ショック直前の洞爺湖サミットで危機の発生を防ぐことができなかった。そのてつは踏みたくない」
「世界経済は分岐点にある。政策対応を誤ると、危機に陥るリスクがあるのは認識しておかなければならない」


としながら、国際公約とされてきた消費増税が行えないのは決してアベノミクスの失敗ではなく、世界的な経済状況(外圧)によるものだと苦しいアピールをしています。
しかも、ドイツのメルケル首相が「危機」は言いすぎだろうと反応し、なんとも恥ずかしい展開に。
持ち出してきたデーターも信憑性を欠き、各国のエコノミストからは鼻で笑われ、「リーマン前」という表現は世界各国で不評を買ってしまいました。
大見得を切って景気条項を削除したばっかりに、リマーンショック級の事態であることをG7首脳を前に演出しなければならないジレンマに陥っているようです。

思い起こせばつい先日の国会で、パナマ文書に端を発する租税回避問題について、日本からケイマンへの証券投資が74兆円に及び、そこへ適正な課税を行えば消費増税はしなくていいのではないかと追及された際も、不確実な税収をあてにはできないとの理由で、改めて責任を持って消費増税を行う意向と答弁したばかりでしたが、舌の根も乾かぬうちに・・・。国会とは何なのか、考えてしまいます。

しかも、消費増税を延期する場合は国民に信を問うと、衆参同日選挙あるいは参議院選挙→衆議院選挙の可能性が現実味を帯びてきました。
もちろん、租税回避の問題や議員定数削減(現状で2020年に10削減のみ)などの課題が解消される前に、手軽な方法として消費増税が行われることは糾弾されるべきですし、そもそも現状の国内経済の停滞ぶりは2014年の消費税8%への増税という失政が主たる原因と見られる以上、この期に及んで消費税を10%にまで引き上げるという暴挙は誰も望んでおりません。
一方、この状況は明らかにアベノミクスの失敗で、野党はこぞって消費税延期をかねてより主張しているわけですし、安倍政権があたかも「英断」のように消費増税延期を争点に信を問うというのも何だか腑に落ちません。


消費税が上がり、物価も上がり、自動車税も上がり、保険料も上がり、控除を減らし・・・
実質賃金の低下にあえぐ国民の視線は、安倍政権に冷ややかであることは間違いありません(´・ω・`)


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アベノミクスの成長戦略の上で重要な位置づけを占める設備投資の増加。

早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の野口悠紀雄氏は、先月のダイヤモンド誌上連載記事の中で、日銀が推し進める異次元金融緩和の評価について、物価や株価ではなく、設備投資でなされるべきと、そのデーターを分析しています。

①設備投資は、リーマンショックで大きく落ち込んだものが2010年には回復したが、その後はあまり増加していない。
②最近時点での設備投資額は、リーマンショック前よりかなり低くなっている。(2007年:56.2兆円⇒2010年:38.3兆円⇒2014年:39.9兆円←消費増税前の駆け込みの影響)

すなわち、異次元緩和措置は設備投資を増加させていないのです。
「この状況は、株価がリーマンショック前のピークを超えたのと対照的だ。株価は、実体経済に関する企業の見通しを正しく反映していないと言わざるを得ない」。

では、金利が低下したにもかかわらず、なぜ設備投資が増えないのでしょう?
その答えとして、野口悠紀雄氏は「売上高が増えないからである」と述べています。


法人企業統計において、全体的に営業利益が回復しつつある一方で(2007年:56.0兆円⇒2014年:54.7兆円)、売上高はリーマンショック以降、ほぼ継続して減少しているとのこと(2007年:1524.8兆円⇒2014年:1329.4兆円)。
つまり、設備投資は利益よりも売上高による影響を受けており、いくら金利が低くても売上高が増えない状況で設備投資を行えば過剰生産に陥ってしまうため、政策として重要なのは金利低下や法人税減税ではないのです。
そして、日銀の異次元金融緩和は売上高の増加にほとんど寄与しておらず、今後も売上高とともに設備投資が減る可能性が大いに有ります。

ここで野口氏は、製造業と非製造業の動向の差に目を向けます。
製造業の売上高と設備投資はリーマンショック前に比べて落ち込んでいるのに対し、非製造業は一定の水準を保っています
ここから、売上高の減少は人口減少によるのではないことが分かります(総人口の影響は製造業にも非製造業にも同じように影響するはずのため)。
そして、いまや設備投資の規模で見て、非製造業は製造業の倍近くになっているとのこと。
この両者の差はひとえに、「製造業が国際競争にさらされている」ことによると野口氏は指摘します。

「設備投資を増やしたいのであれば、製造業を増やす方策を考えるべきだ。非製造業の売上高は、円安や金利ではなく、個人消費の見込みに影響される面が強い。だから、実質消費を増やすことを考えるべきだ。
 実質所得が増えれば実質消費は増える。しかし、実際には金融緩和で円安になり、それが物価を高めて実質所得を減らしてしまっている。理論的には資産効果があり得るが、消費全体の動向を決めるものは、実質所得の動向である。いまの日本で必要とされるのは、実質所得を増加させる政策だからだ。そうした観点から、金融緩和政策の是非が、根本から問い直されなくてはならない」


これまで紹介した多くの識者同様に、アベノミクスの政策に警鐘を鳴らし続けている野口悠紀雄氏。
その講演会では、より踏み込んだ内容を分かり易く解説していただけます

野口悠紀雄 講演依頼


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前回に引き続き、今回も水野和夫氏『資本主義の終焉と歴史の危機』の内容をご紹介。
同書には講演会でも人気の名だたる講師から多くの賛辞を寄せられています。

佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)「21世紀の資本主義が全般的危機に直面している現実を解明した好著。分かりやすく、役に立つ。」
・内田樹氏(神戸女学院大学名誉教授)「資本主義の終わりをどうソフトランディングさせるかの大変クールな分析。グローバル資本主義と民主制の食い合わせが悪いという指摘にも深く納得。」
田原総一朗氏(ジャーナリスト)「『資本主義の終焉』をなんとしても否定したいのだが、本書には憎らしいほどの説得力がある。」
・養老孟司氏(東京大学名誉教授)「素人の私が読んでも面白い経済の本。読むなら、こういう本がいいなあ。」
・橋本直樹氏(鹿児島大学経済情報学科教授)「なりは新書で小さいが、ピケティの大著に匹敵する内容を持つ骨太な資本主義論。秀逸。」

やはり、ピケティとリンクさせる識者も多いようですね。
水野和夫 講演

水野氏は同書の中で、クリントン政権時のローレンス・サマーズ財務長官による「三年に一度バブルは生成し、崩壊する」という言葉を度々引用しています。
リーマン・ショックは、もはや地理的・物的空間で成長できなくなった先進国が、電子・金融空間で高レバレッジ(FXのように証拠金の数倍~数100倍規模の金額で運用可能な取引)や欠陥金融派生商品による無理な膨張を続けた結果、それが破裂しておきました。

そして、グローバリゼーションが加速したことにより、いつしか雇用者と資本家が切り離され、資本家だけに利益が集中していきます。
そもそもグローバリゼーションとは、帝国システム(政治的側面)・資本主義システム(経済的システム)における「中心」と「周辺」の組み換え作業 なのですが、かつての「中心」は北の先進国であり、「周辺」は南の途上国でした。
それが21世紀になると、「中心」はウォール街となり、「周辺」は自国の サブプライム層になったのです。

かくして、その後のアメリカでは、バブルの生成過程で富が上位1%の人に集中し、バブル崩壊の過程で国家が公的資金を注入し、巨大金融機関が救済される一方で、負担はバブル崩壊でリストラにあうなどのかたちで中間層に向けられ、彼らが貧困層に転落することになります
バーナンキFRB議長による量的緩和政策も、中間層を置き去りにして、富裕層のみを豊かにするバブルを醸成するものに他なりません。

さらに、民主主義は価値観を同じくする中間層の存在があってはじめて機能するのであり、資本に国家が従属するような「粗暴な」資本主義下において、多くの人の所得が減少する中間層の没落は、民主主義の基盤を破壊するものであると水野氏は警鐘を鳴らしています。

「『雇用なき経済成長』でしか資本主義を維持できなくなった現在、経済成長を目的とする経済政策は、危機の濃度をさらに高めることにしか寄与しないでしょう。その格好の事例を今まさに現在進行形で展開しているアベノミクスに見て取ることができます」

水野氏は、量的緩和によって貨幣が増加しても金融・資本市場で吸収されて実物経済に反映されることはなく、資産バブルを加速させるだけで、バブルが崩壊すれば巨大な信用収縮が起こり、そのしわ寄せが雇用に集中すると指摘。
アベノミクス第一の矢・金融緩和によるデフレ脱却はできないと見ています

一方、第二の矢である積極的な財政出動についても、経済が需要の飽和点に達している以上、無意味であると批判しています。
さらに、公共投資を増やす積極財政政策は、過剰設備を維持する固定資本消耗を一層膨らませて賃金を圧迫し、雇用なき経済成長の元凶になってしまいます。

現在の日本は、インフレ目標政策(第一の矢)や公共投資(第二の矢)、法人税減税や規制緩和(第三の矢)を総動員して何とか「成長」という近代システムを維持・強化しようとやっきですが、その過程で雇用が資本の犠牲となり、中間層の没落が始まっているのです。

「成長を求めるほど危機を呼び寄せてしまう現在、私たちは、近代そのものを見直して、脱成長システム、ポスト近代システムを見据えなければなりません」

かくして水野氏の論は、近代を支える「成長」というイデオロギーからの脱却=「脱成長」へと向けられるのですが、その詳細はまた次回にお伝え致しますね。
Coming Soon...

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