年間聴講100件超! 講演会マニアが経済の明日を占うブログ

1年間に100件超もの経済に関する講演を聴講している講演会マニアが、見聞きした講師の話を通じて日本経済の展望を語るブログです。

タグ:世界経済

いよいよ間近に迫ったアメリカ大統領選。
女性軽視の発言をめぐり支持率を急激に下げたトランプと、
機密情報を私用メールで扱っていた問題でFBIが動き出したヒラリー・クリントン。
過去、最も人気のない2人の戦いとまで揶揄されるなか、3回のTV討論を経て、クリントンの勝利がほぼ確実視されてきましたが、直近の世論調査ではFBI捜査の影響で、トランプの支持率がヒラリーの1%差にまで猛追しています。
america

通常、株式マーケットは、(特に二期続いたあとの)大統領選のように不確実な要素をはらむと、投資家がリスクを回避するため値を下げる傾向にあるのですが、ある程度の結果が見えれくれば、そのリスクすら織り込んで値も回復することが多いようですね。

仮にトランプが勝利するとなれば、オバマケアと言われる医療保険制度の廃止や、ドル安に仕向けるFRBへの介入、減税などの社会的変化が見込まれていましたが、大方の予想通りにヒラリー・クリントンが勝利するとして、どのような影響が考えられるでしょうか?

一つ重要なのは、民主党のヒラリー・クリントンが勝利し、女性初の大統領になったとしても、議会では共和党の優位がほぼ揺るがないという事実です。
すなわち、これは現在のオバマ大統領が置かれている状態と変わりません。
大統領は軍事面での最終的な意思発動はできますが、立法権を持たないため政策面では議会で可決された法案への署名を拒否することくらいしかできず、自ら立案した政策を法として発効できる権限は有していないのです。
(ちなみに大統領が拒否した議案も、両院で2/3以上の賛成があれば再可決されてしまいます)
つまり、大統領が変わろうとも議会両院で共和党多数という状況が変わらなければ、少なくとも金融・経済政策面において大きな変化は生じえないというのが大まかな見方です。

選挙を意識してか、(財政赤字の悪化を招きかねず、自国の雇用改善にも寄与しない)TPPへの慎重論を唱えていたヒラリー・クリントンですが、当選すれば、以前のようにTPPを推し進めると見られています。

もちろん、経済が好調なアメリカの国外では、世界経済が不安定となるリスクを抱えています。
イギリスではEU離脱交渉をめぐり、10月初めにメイ首相が移民流入制限重視を唱え、「ハードブレグジット(強硬なEU離脱)」路線を表明したことでポンド安に改めて拍車がかかり、インフレ懸念が高まっています。

また、シェールガスの台頭にともなう原油安の影響を受けて、9月末にOPECが8年ぶりとなる石油減産に合意。
原油依存が深刻で財政が悪化しているサウジアラビアは固定相場制を採っているのですが、現在の原油価格では輸出を続けても損益分岐点を下回ってしまうため、次なる手として自国通貨(リヤル)の切り下げに向かうと見られています。
そうなれば、(円安と同じ仕組みですが)輸出に有利となって国際競争力が増すため、(ある程度の初期設備投資をすでに回収できているとはいえ)シェールガス市場に影響は少なくありません。
安全保障・軍事面では強硬派とも見られているクリントンが今後の中東や対中国政策にどのような影響を及ぼすのかも懸念されるところですね。


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去る2015/9/16-17に開催されたアメリカの米連邦公開市場委員会(FOMC)で、利上げ見送りが決定されました。
そして、先月の10/27-28に開かれたFOMCでも、やはり見送り

FRB(米国連邦準備制度理事会)のイエレン議長はかねてより、「利上げ開始はリーマンショック後のトラウマが癒えたシグナル」とその機会を図っており、エコノミストの半数も直前まで9月の利上げ発表を予想していました。
前回の記事でご案内したとおり、「利上げ」は景気が好調なしるし。今回の利上げについては、アメリカが2007年のサブプライムローン問題に起因する2008年のリーマンショックにともなう不況から完全に脱却したという象徴的な出来事であるとともに、次なるバブルへの備えでもあります。

しかし、世界の消費を牽引してきた中国株の暴落を受け、混乱を極める世界経済および金融市場への影響を懸念し、アメリカは事実上の「ゼロ金利」となる現在の金利据え置きを決めました。
一旦12月頃まで先送りされるのではという見方の一方、もはや年内の利上げは困難との見方が早くも強まっています。
(2015/12/16追記記事⇒ 

FRB イエレン議長


では、なぜアメリカは現段階での利上げを見送っているのでしょうか?
アメリカ経済は堅調とはいえ、欧州や中国をはじめ世界経済は不安定ですし、仮にアメリカのGDPが減速しようものなら利上げは景気回復を阻害してしまいます。
当然ながら、自国の失業率やGDPをはじめとする経済状況を慎重に見極めたいという思惑はあるでしょう。
しかし、それ以上に世界経済への影響が憂慮されているのです。

アメリカが利上げをすると、ドルの利回りがよくなるため、当然ドルは買われやすくなります。
そうなると、中国や新興国に流れていた投資マネーが大量にアメリカへ戻ると考えられ、ただでさえ中国株暴落⇒人民元切り下げによって混乱している世界経済への影響が大きいと、現状での利上げに対する慎重論が強まっているのです。
特に、世界の基軸通貨となっているドルを通じて買われている新興国通貨への影響は計り知れません!

とはいえ、新興国への影響を気にして自国のバブルがはじけては本末転倒。
次回のFMOCは12/15-16に予定されており、そこで利上げの時期について何らかの発表があるのでしょうか。
もちろん、アメリカが利上げを行えば、その影響として、円が売られてドルが買われる円安ドル高になることが予想され、円安になると輸出の多い大企業に有利になるため、日本の株価も全体的にあがることが考えられます。
円は1ドル=125~130円ほどには安くなり、株価は少なくとも2万円台を回復するのではという見方もあるようですが、年内利上げがあるのか無いのか、投資家は引き続きFRBの動向を注視する必要がありそうです。
このブログでもセミナーや講演会等で情報を収集しつつ、引き続きアメリカの利上げに関する情報をお伝えしてまいりますね

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