年間聴講100件超! 講演会マニアが経済の明日を占うブログ

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タグ:田中康夫

最新号のプレジデント誌(2015年4月13日号)に「大企業の法人税の支払いは少なすぎる!?」との記事が掲載されていました。

法人税には大きく分けて以下の3つがあります。
 ・法人企業の所得に対する国税としての法人税
 ・地方税の法人住民税
 ・法人事業税

この3つの税を合計した実質の税率(法定正味税率)は34.62%で、アメリカの40.75%に次ぎ世界で二番目の高さになります。
そこでアベノミクスによる経済政策では法人税減税を推し進め、企業活動を活性化させて成長を促すことを計画し、2015年度に32.11%⇒2016年度に31.33%と段階的に減税。数年のうちに20%台にまで引き下げる意向です。

かねてより言われるトリクルダウン論にもとづき、「企業の賃上げ余力を高め、アベノミクスの恩恵が地方や中小企業に幅広く行き渡るように促す」ことが狙いですが、果たしてそう上手くいくでしょうか。
つい最近もトヨタの下請け企業が、原材料費の高騰が利益を圧迫する中、経営に余裕がなくても賃上げをさぜるを得ない現状が伝えられたばかり。
法人税減税分を賃上げに直結させず、キャッシュフローに余力を持たせるべく、内部留保にまわす経営者も多いはず。
そもそも、現状の法人税制は企業活動の実態と公平性に即したものなのでしょうか(´・ω・`)?

上記プレジデント誌の記事では、筆者の中央大学名誉教授・富岡幸雄氏が以下のように述べています。

「『法人税』が高いという認識は、実は実情とかけ離れている。 国の稼ぎ頭である大手企業は、各々がグローバル市場を舞台に次第に無国籍化してゆき、税制の欠陥や抜け穴を巧みに活用して節税を行い、時には地球的スケールで課税逃れを行っている。これが、日本の税制の空洞化および財政赤字の原因となっているのだ」

2014年3月期の法人の所得に対する法定正味税率は38.01%であるのに対し、個別の企業の利潤に対する実際の納税額の負担割合である「実行税負担率」は著しく低いようです。
さらに富岡氏は、「現在の日本の法人税の実際の負担は、企業の規模によって著しい格差が存在している」と指摘しています

資本金1~5億円クラスの中堅企業の法人税等合計税額の平均負担率は37.92%。
同1億円以下の法人は中小企業に対する軽減税率が適用されるのですが、資本金1000万円以下の小規模企業の負担率でも30.07%です。
それに対し、資本金100億円超の大手企業だと、法人税等合計税額の平均負担率が、外国税額を含めても17.20%と極端に低いのです!

その上で、富岡氏は以下のように述べています。

「こうした異常事態は、企業優遇税制である租税特別措置の政策減税が特定の大企業に集中していることと同時に、法人税制の仕組みそのものの欠陥に負うところが大きい」

「今の税制は表向き公平・公正だが、先の消費税の例からも分かるように政治家の利権となり、妥協と談合と癒着によってつくられた矛盾の塊と化している。財政赤字で消費税を上げるか否かで大騒ぎしたのに、経団連は法人税の引き上げ圧力をかけ、一方で露骨に政治資金を斡旋する。自民党が経団連からOKを取り付けなければ法人税制を変えることは困難だが、一度得たこの既得権益を経団連が手放すとは到底思えない」

「法人税制を改正するということは、その欠陥の是正と、租税特別措置による極端な優遇税制の廃止によるゆがみを解消することである。今、急務なのは崩壊した法人税制の『再建』であって『減税』ではない」

まったくもって、その通りだと思います。
三橋貴明氏も、法人税減税は最悪の愚策だとおっしゃってました。

こうした法人税の実態に対し、田中康夫氏が新たな税制を提唱していますので、次回にご紹介させていただきますね

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<実行税負担率の低い大企業1-10位> メガバンク 。゚(゚´Д`゚)゜。

法人税負担

1983年の名著『構造と力』によって難解な現代西洋哲学をあっさりとチャート化し、「スキゾ」や「パラノ」といった流行語を生み出すなど、かつて“ニューアカブーム”の旗手と評された浅田彰氏。
京都大学経済学部で教鞭を取りながら、音楽や文学、映画、絵画、舞踊、建築といったありとあらゆる芸術を横断し、行く先々で各分野の専門家顔負けの鮮やかな批評を展開されてこられた姿はまさに天才そのもの。現在は京都造形芸術大学に籍を移し、その活躍の場を広げられています。

その浅田彰氏が、媒体を変えながらも長らく続けておられるのが田中康夫氏との雑誌対談『憂国呆談』です。今も「ソトコト」誌上で、毎月、政治経済・社会・芸術文化など様々な時事問題について縦横無尽にお二人で語られていて、とても楽しみにしています。
最新号ではシャルリー・エブド襲撃事件から、イスラム国の問題、そして話題のピケティ『21世紀の資本』について触れられていて興味深いので、ご紹介させていただきますね。
憂国呆談

対談ではまず、フランスについて浅田彰氏が「『他者に開かれた多文化社会』を目指しつつ、実際は移民を嫌な仕事のための安い労働力として使い、ゲットー的な地区に隔離してきたんで、テロの背景にもその矛盾があるし、国民戦線もそういう多文化主義の偽善を批判して大衆の支持をあつめている」と指摘。
それを受けて田中康夫氏は、「話しても完璧には分かり合えない存在だからこそ会話する価値が、恋愛でも家族でも職場でも生まれるように、それこそが政治や外交の折衝。なのに、最近では洋の東西を問わず、問答無用の思考停止状態な指導者が持てはやされる。それと同じ単純思考のベクトル上に、移民排斥運動が増えてきている」との見解を述べられています。

続いて、日本の移民政策についても、年間20万人ずつ移民を受けれることで50年後にも1億人程度の安定的な人口構造を保持できるとする政府見解に対し、田中康夫氏は「移民に賛成反対の二元論ではなく、1億人でいくのか6000万人程度の日本でいくのか、その選択肢も、さらには、超少子・超高齢の日本において働き手をどうするのかも国民に示さずに、大本営発表が既成事実化していく」と警鐘を鳴らし、浅田彰氏も「移民を受け入れざるをえない局面はあるし、移民を排除することはないけれど、そもそも1億人を保持するって目標が間違ってる」と応えていました。

そして、ピケティの『21世紀の資本』に対するお二人の見解が述べられるのですが、以下に引用させていただきます。


浅田 イスラムをめぐる宗教戦争も実際はグローバル資本主義とそれに乗り遅れた人々の闘争なんで、政治経済学的な分析が不可欠。フランスのトマ・ピケティの『21世紀の資本(論)』が世界的なベストセラーになったのも不思議じゃない。ただ、原書が出たとき読んで、このタイトルはまったくの誇大広告だとわかった。マルクスが『資本(論)』で資本主義のメカニズムを原理論的に解き明かし、資本主義を乗り越える方向を示したのに対し、ピケティの『21世紀の資本(論)』は、資本主義下で(戦争の時期を除き)格差が拡大する傾向にあることを統計から現象論的に実証し、税制によるその是正を提案するだけ。その程度の本を『資本(論)』と題してベストセラーにするなんて、ウエルベック(*)なみのあざといメディア戦略だよ(苦笑)。
*:くしくもシャルリー・エブド襲撃事件の日に、政治家の実名を散りばめながら、フランスにイスラム系の大統領が誕生するという筋立ての近未来小説『服従』を発表した人気作家

田中 「貧富の統計」をああいうかたちで可視化した経済学者がいなかっただけで、新しい何かを見出したわけではないからね。レジオドール勲章を辞退したのもスゴイと話題になっているけど、愉快犯みたいなもの。自分はオランドを支持していたけど、今は違うので彼から受け取りたくないってだけだ。オバマを支持していたハリウッド俳優が最近の彼はダメだと怒っているのと同じような類い。

浅田
 日本でも遅まきながら邦訳が出て、ピケティが宣伝のため2月に来日するらしい。対談しないかって言われたけど、とくに興味ないな。 

田中 監訳が山形浩生(*)ですから。
*:誤った認識のもとに誰かの言説を批判しては事後に誤りを認めざるをえなくなり、謝罪することの多い人で、浅田彰氏にも絡んだことがありました・・・


浅田氏といえば、京都大学大学院在学中に書かれた『構造と力』の前文で、マルクスの資本論なんて「どう見ても寝転がって読むようにできている と涼やかに言ってのけた御方。
ただ、裏を返せばそれくらい、マルクスの『資本論』は重要な書物ということ。

浅田氏はピケティと同じフランス人の中でも、特にミシェル・フーコーやロラン・バルト、ジル・ドゥルーズやジャック・デリダといった名だたる知の巨人たちの思想に触れてこられた方なので、『21世紀の資本』には、資本主義の限界を乗り越える方向性が何ら示されていないことに物足りなさを感じておられるようです。
氏や氏のように、そうしたピケティの姿勢をある種の「謙虚さ」として受け止めることはできるかもしれませんが、格差拡大に対する処方が累進性の資産課税の世界的導入という提言に終わってしまうところはやはり、ピケティの限界と言えるのではないでしょうか。

このように、浅田彰氏は様々なトークイベントで刺激的な発言をされておられます。
田中康夫氏も講演依頼サイトに登録をされているようなので、ぜひ聞いてみたいと思っているのですが、なかなか機会がありません(´・ω・`)

田中氏はかねてより、「日本の株式会社の7割、連結決算を導入する大企業の66%が国税の法人税と地方税の法人事業税を1円も納付していない」という税制の現状を批判されていますので、また次回にご紹介させていただきますね


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