年間聴講100件超! 講演会マニアが経済の明日を占うブログ

1年間に100件超もの経済に関する講演を聴講している講演会マニアが、見聞きした講師の話を通じて日本経済の展望を語るブログです。

タグ:経済

いわゆる“ロシアゲート”問題で弾劾危機にあるドナルド・トランプ。
NATOに関わる国家機密をロシアに漏らしたことで、国内のみならず、NATO加盟国からの風当たりも強まっています。
もともと財を成した敏腕ビジネスマンのため、当選後は現実的な路線を行くのではとも目されていたものの、TPP離脱やパリ協定離脱強行(娘のビアンカさんすら反対していましたが、6/2に離脱決定・・・)など、我が道をいくばかり。
去る5月18日には、トランプ政治への不信感からドル売りが加速し、いつもながら安全とされる円買いが加速。
1ドル=111円台にまで円高が加速しました。

その一方で米国の株価を見ると、3月に入国制限を巡る混乱やオバマケア代替案撤回によってやや息切れした後、上げ下げしながら回復を続け、今ではダウ平均、S&P500、ハイテク株の比重が高いナスダック総合の主要3指数が史上最高値の更新を重ねています・・・。

支持率は45%前後と低値でも共和党の支持基盤はそこまで揺らいでいませんが、仮に経済も不調になって支持率が急落すれば、北朝鮮への武力行使というシナリオも捨ててはいないはず。
しかし、アメリカが北朝鮮へ攻撃をすればアジア通貨危機の再来となりかねず、その不景気はアメリカにもブーメランのようにかえってくると思われるため、その可能性は限りなく低いとも見られています。

ABBIを主導し、現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を掲げ国際社会おけるプレゼンスを高めようと目論む中国が、アメリカのパリ協定離脱に対してどう出るのかも気になるところです。


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マクロン氏の勝利で幕を閉じたフランス大統領選。
ゴリゴリの“極右”だった父親に対し、しなやかで、政治的センスに長けたマリーヌ・ルペンは反移民・反EUを掲げて大いに躍進を遂げましたが、決選投票では4割弱の得票にとどまりました。
仮にルペン勝利となればイギリスに続き大国がEUから離脱することになり、世界経済にとってリーマンショック以上のインパクトが予想されていたため、マーケットは一安心といったところでしょうか。

結果、39歳のマクロンがフランス史上最年少の大統領に就任。
決選投票前日には、彼の財産等に関する資料やメール等がサイバー攻撃によって流出するなど、アメリカ大統領選同様にロシアの影もちらついていましたが、フランス国民の良識は“中道”を選びました。
マクロン自身はロスチャイルド系銀行の超エリートで、かつてピケティが『21世紀の資本』で指摘した、まさに1%側の人間のため、格差をはじめとする国民の不満にどれだけ答えられるのか、その政治的手腕には懐疑的な見方も少なくありません。

また、マクロンは無所属のため、来月に控える議会選挙の結果次第では、苦しい議会運営を強いられることが予想されています。
実際、ルペンはまだ40代後半で、年齢的にも次の大統領選を十分視野に収めているはず。
仮にマクロンが失敗すれば、次こそは極右政権の誕生も現実味を帯びてきます。

一か月前は115円台だったユーロは、大統領選を経て、現在124円台と、ユーロ安の状態に。
今年の9月にはドイツ議会選挙も控えていますので、まだまだ油断はできません。
朝鮮半島の緊張も依然として続く中、投資家にとってしばらく難しい局面を迎えそうです。

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トランプ相場によって、ジョージ・ソロスが10億ドル(1140億円ほど)以上におよぶ巨額の損失を出したと報じられています。
かつてアジア通貨危機をもたらしたほどの投機的な売買手法によって知られるヘッジファンド業界の大物ですら、トランプ勝利という選挙の結果と、その後の株価上昇シナリオを読み誤ったということでしょうか。

ここで、金融業界によく使われる用語「ブラック・スワン」について解説します。

ブラック・スワンとは、文字どおり“黒い白鳥”。
かつてヘッジファンドの運用担当者でもあったナシーム・ニコラス・タレブが2006年に発表した著書『ブラック・スワン ~不確実性のリスクと本質~』によるものです。(ナタリー・ポートマン主演の映画とはまったくの別物です・・・)

かつてのヨーロッパにおいて、“白鳥は全て白い”という当たり前のように誰もが信じきっていた通説・常識が、1697年にオーストラリアで黒い白鳥が発見されたことにより根底から覆され、鳥類学会に思いもよらぬインパクトを与えたというエピソードから、金融業会では、統計や確率、それまでの経験等では予測し得ない事象(自然災害含む)がおこり、市場に多大な影響をおよぼすことを「ブラック・スワン」と呼ばれるようになりました。
そして、予測できず「ありえない」と思われていたこと、そしてそれが起きれば非常に強い影響力を持つ事象が実際に起こってしまうと、今度はそれがあたかも当然であったかのような説明が事後的に施されていくといった特徴もあるようです。

こうした「不確実性」のもたらすリスクを加味した「ブラック・スワン理論」にもとづいて投資を行うヘッジファンドもあるようです。
2016年は、ブレグジットやトランプの勝利など、大方の予想を裏切るブラック・スワン的事象が相次ぎ、「ポスト・トゥルース」という用語まで盛んに用いられましたが、今年はどうなることでしょう。
寛容さで知られるオランダで極右勢力が各日に力を伸ばした中、ル・ペンが支持を拡大しつつあるフランス大統領選、ドイツ議会選などEU存続のかかったヨーロッパ政治イベントが目白押し。

今年もこれまで多くの経済講演会や投資関連のセミナーを聴講してきましたが、リスクを取るのか、はたまたリスクを取らないことがリスクとなるのか、投資家にとっては引き続き難しい一年になりそうです。

blackswan


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トランプの大統領就任から1ヶ月以上経ちますが、まさにやりたい放題ですね。。。
この1~2月に様々な専門家の講演会を拝聴してきましたが、どこに行ってもトランプ、トランプ、トランプ・・・といった感じでした。
大統領就任後はある程度現実的な路線に落ち着くのではとの予想を鮮やかに裏切りながら、大統領令を連発し、不法移民排斥を進め、ツイッターでの企業攻撃を繰り返しています。

こうしたトランプの政策は国内外で批判を浴びる一方で、株式相場は絶好調。
IT業界を始め移民の労働力に頼る産業も多い中、法人税減税と大規模な財政出動が好感され、FRBによる更なる利上げも近づいているような気がします。
もちろん、アメリカが利上げを行えば、マイナス金利状態の日本との金利差が拡大するため、普通に行けば為替相場は円安に振れるはず。
金利の高いドルが買われ、金利の低い円が売られて円安ドル高になるというのが自然な動きです。
しかし、多額の貿易赤字の原因として中国・日本を名指しでトランプは非難しており、輸出拡大のためFRBに介入してドル安を仕掛けるのではとも見られており予断を許しません。

かと思えば、台湾を利用して「一つの中国」を支持したり、安倍首相とゴルフを楽しんだりと、トランプは上手くアメとムチを使い分けながら独自の外交を貫いています。
かねてより親ロと言われているトランプですが、ロシアは亡命していた(用済みとなった)スノーデンをアメリカに引き渡す動きもみせており、彼の行く末が気になるところですね。

そして、いよいよ、トランプは軍事力の増強にも着手しました。
金正男氏が暗殺されたことで緊張感が高まっている北朝鮮に対し、金正恩体制崩壊に向けて何らかの手段を講じる可能性もありますね。
これまで訓練を重ねてきたように、仮に韓国軍と連携して北朝鮮を制圧した場合に、韓国が「北の核」を接収してしまうと日本も一気に緊張感が高まりそうです。
もちろん、中国も黙ってはいないと思いますが・・・。

さらに、今年はヨーロッパで重要な選挙が少なくとも3つ控えています!
まずはオランダ。比較的慣用といわれるこの国で、今、極右のリーダーが一番の支持を集めている状況です。
次にフランスの大統領選。移民排斥とEU離脱を掲げる同じく極右のルペンは着実に支持を拡大しています(今のところ、決選投票で敗れるのではと見られていますが、先のブレグジットやアメリカ大統領選挙のように、何が起こるかわからないのがポスト・トゥルースのこの時代、とも言えるのではないでしょうか。
そして、フランスとともにEUの要となっているドイツの議会選挙。仮にフランス、ドイツでともにEU離脱派が多数を占めてしまったら、EUは崩壊し、世界的な恐慌につながりかねません。

今年も投資家の方々にとっては気の抜けない一年になりそうです。


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前回の記事でも紹介しましたがイギリス国民投票によるEU離脱の衝撃は大きく、行く先々の経済講演会で、この先の展望について質問が飛んでいました・・・。

そんななか!なんと!離脱派の公約違反が明らかになりました
これまで、離脱をすればイギリスがEUに払っている高額な拠出金(週当たり3億5千ポンド=480億円ほど)が浮くため、財政難にあえぐ国民の保険サービス拡充に出資できると主張していたはずなのですが、実際の拠出金負担がその半分以下で1億数千万ポンドだったことが判明し、独立党のファラージュ党首は「そんなことは言ってない」とシラを切り始めましたΣ( ̄ロ ̄|||)

これから先は大規模な経済混乱が予測されるため、勝利した離脱派もさすがに性急な手続は避けるべきだと慎重な姿勢をのぞかせているのですが、EU側からは「遅滞があれば、不透明感を不必要に長引かせる」と迅速な離脱交渉を促されています。
また、離脱派はEUに留まらなくても各国とFTA(自由貿易協定)を結べばいいと主張してきたのですが、ドイツのメルケル首相は、確かに移民をはじめとするEUの義務は免除されるものの、ヒト・モノ・カネの移動の自由といったこれまでの特権も認めないという厳しい姿勢を見せており、当然ですがイギリスの“いいとこ取り”は断固として許さないと早くも牽制されてしまいました

キャメロン首相が10月までの辞職を表明しているため、保守党内で離脱交渉を行う次のリーダーを選ぶ動きが加速しているのですが、ここにきて離脱派リーダーを務めてきた前ロンドン市長のジョンソン氏がなんと不出馬を宣言。
その動きについて、元外交官・作家の佐藤優氏は「無責任極まりない」としながらも、経済が大混乱することは明らかで、どうせ首相を引き受けてもボロボロになって短期で退陣することになると分かっているため、あえて火中の栗を拾わないようしたのだとラジオで指摘しています。
佐藤優

何でもイギリスでは、アイルランドとの二重国籍の資格を持つ多くの人々が、アイルランドへパスポート申請を行い始めているそうで、それほどまでに庶民の危機感は募っているのだとか。
また、よく報道されているように、EUに留まりたいスコットランドでは独立の動きが再燃しています(そもそも住民投票でイギリス残留が決まった後の下院選挙ですら、すでに独立派が多数を占めています)。
しかし、いくらスコットランドがEUに留まりたいと言ったところで、EU側は独立国家でない以上、加入は認められないという回答しかできません。
それを受けて、スコットランドでは、「独立国家じゃないからEUに加盟できないんだったら、独立国家になっちゃおう(・∀・)」と、戦略的にイギリスからの独立の動きを進めているようです。

富裕層の多いロンドンに対して、貧困層の多いスコットランドでのこうした動きは、ウェールズや北アイルランドの民族意識を強めかねず、さらにはスペイン(バスクやカタロニア)やベルギー(フランドル)といった民族間対立を抱える国家にも飛び火する可能性すら帯びています。
かくして世界の各地では、大民族と小民族との抗争に経済格差が絡み、大きな衝突が生まれようとしているのです。
(ちなみに、日本で同じ構造を持つのは沖縄ですね・・・)

佐藤氏によれば、イギリスは農産物をフランスから、工業製品をドイツから輸入していて、何で儲けているかと言えば“マネー”に他ならないとのこと。
(イギリスのEUへの輸出は20兆円ほど、EUからの輸入は30兆円ほどです)
もし、金融帝国として栄えてきたイギリスがこれまで特権として享受してきたEU内でのヒト・モノ・カネの移動を制限されれば、シティ(ロンドンの金融街)がエジンバラ(スコットランド)に移動することだってありえます。
もしスコットランドが本当に独立してしまえば、イギリスは北海油田を失い、高価なアトランティック・サーモンの収益を失い、グラスゴー近郊にある原子力潜水艦基地も移転しなければならず(引受先もない…)、そうなれば安全保障上の問題すら出てくるそうです。
しかも、現実として安価で危険な労働の多くを担っている移民の流入を止めてしまえば、イギリス製品の競争力はおのずと落ちることになり、ドイツ製品にますます大きく水を分けられてしまいます。

こうして合理的に考えるとEUを離脱していいことは何もないもかかわらず、自分たちの生活がよくならないのはEUのせい(ドイツの一人勝ちにつきあっている)という離脱派の「心情」を止めることができなかったのは、政治の敗北に他なりません。

日本への影響について言えば、佐藤優氏はイギリスのEU離脱を「アベノミクスの終わりの始まり」と形容し、例えばマーケットにおいて離脱派勝利の混乱が早くも収束しつつあると楽観する動きについて、とても危険な兆候だと警鐘を鳴らしています。
佐藤氏によれば、例えば自身が背任の罪でかつて逮捕されたときも、ソ連が崩壊したときも、あるいは一般に会社が倒産するようなときも、人間は危険に直面すると楽観に傾きやすく、根拠のない脆弱な楽観論に依存している状態は極めて危険なのだとか。
9月まで情勢がどうなるか見えないなか、マーケットの不安が高まれば株価は15000円を割り、ドル円も二桁に突入すると分析していました。

奇しくも先の伊勢志摩サミットでは出鱈目な理由を持ち出して「リーマン級」と世界経済の危機をあおり、各国で顰蹙を買ってしまった安部首相ですが、今となっては全く違う理由でリーマン以上の危機に瀕することになりそうですね・・・。
タイムスケジュールとしてイギリスの正式なEU離脱までには手続上2年ほどの時間を要すので、これから急激な変化があるわけではないのですが、投機筋ではポンドが売られ、ユーロが売られ、かといってアメリカもドル高を進めるような動きはなく、余計なことにかかわっていないことで相対的に「安全」とされる円やオーストラリアドル、ニュージーランドドルといった通貨が買われることになるでしょう。

グローバリゼーションの恐ろしいところですが、円安誘導と株高(豊富な年金資金を用いた株価の下支えもありますが…)に支えられえてきたアベノミクスは、外国発の経済危機に飲み込まれようとしています。
自動車をはじめとする日本の輸出関連企業は大きな打撃を被ることが予想され、当然ながらその株価も値を下げていくはずです。多くの企業が想定している為替レートは1ドル=110円ほどなので、90円台に入れば大きな誤算となりますね・・・。
さらに、アメリカでトランプが大統領になってしまえば、日本車には高額な関税が待っています

ちなみに佐藤氏は、そもそも自国の通貨が強くなることを恐れてはいけないのだと言います。
そして、かつての日本では円高になってもそれに打ち勝つだけのイノベーションを生み出すことができていたものの、数学をはじめとした力が弱まり、世界的なイノベーションの流れにもはやついて行けなくなってきていると指摘していました。


何はともあれ、こうした株安の状況は富裕層にとってはチャンスですね。
特に金融資産3億円以上を有するような超富裕層は、投資信託に資金を注ぎ込み、値段の下がった安定株を買うことで、資産を10年で倍にすることも可能とのこと。
というわけで、この先は更なる格差拡大が待っていると佐藤氏は睨んでいます

(ちなみに、佐藤優氏の講演は情報の裏側に迫るスリリングな内容が多く、いつも興味深いです


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