年間聴講100件超! 講演会マニアが経済の明日を占うブログ

1年間に100件超もの経済に関する講演を聴講している講演会マニアが、見聞きした講師の話を通じて日本経済の展望を語るブログです。

タグ:経済

今、世界をにぎわせている「ナマ文書」。
中国の習近平や、ロシアのプーチン政権も動揺する文書として、注目を集めています。
今回は、この「パナマ文書」と「タックスヘイブン」について、分かりやすく解説したいと思います。
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まず、「タックスヘイブン(tax haven)」とは、日本語で一般に「租税回避地」と訳されます。
「ヘイブン(haven)」とは遭難した人にとっての避難所や安息の港を意味する単語で、何となく「タックス・ヘブン(tax heaven)」=税金の天国?と勘違いされている方も少なくないと思いますが、当たらずも遠からず。
なにせフランス語では「パラディ・フィスカル(paradis fiscal)」と言われ、まさに税金のパラダイスという意味で使用されています。

自国では税金が高いので、より税の負担の少ない外国にペーパーカンパニーのような書類だけで実態のない会社を作り(オフショア会社)、納税を免れようという「抜け穴」的な仕組で、悪質な脱税やマネーロンダリング(不正に取得したお金を足がつかないように細工すること=資金洗浄)にも使用されています。

もちろん、法人税の負担を低くして外国企業を誘致することで外貨獲得を目論む国家は少なくなりませんが、中には無税のところもあり、国際金融取引上の秩序を省みずあえて不正を助長しているとも見られています。
こうした外国の存在は、自国の税制の根幹を揺るがすものになるため、各国でその対策が講じられていますが、イタチごっこになってしまい、その実態が把握できないことが多くありました。

さて、そこで今回の「パナマ文書」が出てきます。
これはパナマの法律事務所であるモサック・フォンセカが作成したもので、合計2.6テラバイトにおよぶデーターの中には、1970年代からの1150万件&21万4千社の株主・取締役等の情報を含む詳細な情報が記録されています。
昨年、南ドイツ新聞に匿名でリークされたこの「パナマ文書」には、有名人や富裕層など租税回避をはかる固有名が多数含まれており、その全貌は5月にも解析を終えて発表される見通しです。
特に腐敗摘発を掲げてきたはずの習近平の親族や、プーチンの友人の会社が含まれており、使途不明な多額な取引の記録があることで、国民に納税を促す国家指導者層が自身は納税を回避しようと工作を行ってきたことが白日の下にさらされようとしています。

他にも、パナマ文書に含まれる有名人として、サッカーのメッシや、俳優のジャッキー・チェンなど、政治家やセレブを中心に現時点でもそうそうたる顔ぶれが並んでおり、この先、パナマ文書には日本人も含めて様々な名前が挙がってくる可能性がありますね。
心当たりのある人や企業は、今頃びくびくしているのではないでしょうか。

ちなみに、『21世紀の資本』のトマ・ピケティは、資産に応じて課税を強める累進課税の資産税を導入しようと提言しているのですが、単独の国でそれをやっても税率の低い国(タックスヘイブン)へ富裕層が流れるだけなので、世界中で一斉にそれをやろうと、あまり現実的でない主張をしていました。


尚、日本政府の対応として菅官房長官は「パナマ文書の調査に乗り出す予定はないとまさかの見解を発表しています。
ということは、日本の政治家の名前も含まれていたりして・・・。


租税回避は法の抜け穴をついて合法的に行われていることも多いため取り締まりは難しく、モラルの問題とも言われています。
もちろん、政府首脳をはじめとする政治家がやっていればアウトでしょうが、果たしてパナマ文書は「デスノート」になってしまうのか?!
5月の全容解明を座して待ちましょう


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楽しみな経済講演会の情報が入ってきました!
4/25(東京)と4/26(大阪)にSMBC日興証券主催で「著名ヘッジファンド・マネージャー堀古氏が語る『世界経済の見通し』」と銘打たれた堀古英司さんのセミナーがあるようです!
無題

堀古英司さんといえば、ニューヨークでヘッジファンドを運営する凄腕の投資家。
ワールドビジネスサテライトなどテレビ東京のビジネス・経済情報番組でもおなじみですよね。楽天証券のセミナーにもよく出演されています。
IMFも世界経済の弱体化を認めるなか、日本ではマイナス金利導入にもかかわらず「安全資産」として円が買われて円高が進み、株価も7日間下がり続けています。
中東マネーの動向や、中国経済・欧州経済の先行き懸念など不安材料の多いなか、アメリカで活躍するヘッジファンドマネージャーの堀古英司さんがどのような展望を語るのか、興味深いです。
アメリカでは大統領選がいよいよ佳境に入り、7月には両党の候補者が決まって、11月に投票を迎えます。
女性の中絶をめぐる失言によりトランプ旋風にかげりが見える中、その結果が世界経済にどのようなインパクトを与えるのかも是非伺いたいところです。
GDPの7割が個人消費で支えられているというアメリカ経済の近況も知りたいですね。

堀古英司さんの講師としてのプロフィールですが、講演依頼の会社ではSpeakers.jpにだけ情報が載っていました
堀古

「これからの米国経済・株式相場の見通し」
「ヘッジファンド・マネジャーの視点から見る注目の投資テーマ」
「海外投資家から見た日本経済・株式・為替動向の見通し」といった演題も注目ですね。
なんと!米国からのオンライン講演も可能だそうです。

堀古さんの講演はこれまで何度か伺ったことがありますが、いつも満足度が高いですよ!
世界経済の動向にアンテナを張っているお近くの投資家の皆さんは是非、セミナーに参加されてはいかがでしょうか?!


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最近、経済やビジネス関連のニュースで耳にすることも増えてきた「フィンテックという言葉。
先日の週刊「ダイヤモンド」誌上でも特集が組まれたように、今、最も注目を集めている分野ではないでしょうか。
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折りしも前回の記事で紹介したように、マイナス金利の導入にともなう銀行離れが、このブームを更に後押しするのでは?!という見方もあるようです。
そこで今回は、今さら聞けない「フィンテック」について、幾つかの講演会で仕入れた情報をもとに、初心者の皆様にも分かりやすく解説したいと思います。

まず、この「フィンテック(Fintech)」という言葉ですが、「金融(finance)」と「技術(technology)」を組み合わせた造語で、決済や融資、資産管理、マーケット取引といった従来の金融業務にITを駆使することで、新たなサービスを作りだす仕組を指しています。

身近なところでは電子マネーやクレジットカード決済、スマホを活用したモバイル決済やアプリ決済、ビットコインのような仮想通貨、家計・資産管理アプリ、会計・業務支援など様々な分野で、ITを用いた新しいサービスが生まれています。
特に、これまで金融機関が行ってきた融資取引については、融資を受けたい個人と融資を行いたい個人がインターネットを通じて手軽にマッチングできるようなサービス(“P2P取引”といいます)を展開するベンチャー企業も出てきました。
これには、2008年のリーマンショックの影響により、中小零細企業への貸し渋りが進む一方、資金を有している側もゼロ金利政策によって預金利息の収益が低下し、従来の金融取引ではお金を借りられない/お金を増やせないといった状況に陥ったことが背景としてあるようです。

さらに、2007年のiPhone発表に端を発するスマートフォンの普及とあいまって、近年、こうしたサービスを展開する企業への投資が加速し、株式市場においてもその関連銘柄がどんどん株価を上げました。
アメリカでは、「カベージ」(ビッグデータにもとづく零細企業への融資)、「プロスパー」(ネット上における個人間の貸し借り=P2P融資の仲介)、「アヴァント」(中低所得者向けローン)、「レンディングクラブ」(個人間の貸し借り仲介)、「スクエア」(中小零細企業でも手軽に導入できるスマホ決済システム)、「ソフィ」(データーに基づく学生ローン)、「ストライブ」(オンライン上の決済システム)といった、時価総額1000億円を超える新興企業(ユニコーン企業)が幾つも誕生しています。

こうした動きに対し、当初、金融機関は自身を介した取引の減少に直結し、聖域を脅かすものと大きな危機感を募らせていましたが、日本政府はフィンテックの台頭を高く評価しており、金融庁主導のもとで規制緩和を行って、金融機関がこうしたフィンテック関連企業への出資を行いやすくするよう制度を整えるように動いています。
これまで、銀行が事業会社に出資をする際は5%を上限とするよう銀行法に定められているのですが、この規制を大幅に緩和し、ベンチャー企業の買収や業務提携を促進する動きが出てきており、国内3大メガバンクも2015年夏にそれぞれフィンテック専門部署を設置しました。
地銀でも、再編に変わる収益強化のオプションとして、大きな期待を寄せているようです。

かくして世界的には2013年から、日本でも2014年から急激に資金調達を行っているフィンテック業界。
一方、年間1.5兆円の資金調達が行われるほどにまで加熱しているこのフィンテックブームについて、予算や資金調達ばかりが先行しているバブルではないかと、警鐘を鳴らす識者も少なくなりません


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去る1月29日、日銀は金融政策決定会合にて、初めての「マイナス金利」政策に踏み切りました。金融緩和を引き続き行い、2月16日より、当座預金金利を現状の「0.1%」から「-0.1%」へと引き下げる決定がなされたのです。

日銀 黒田総裁
 「・・・へ?」

と、ここまで読んで、「結局、何がどうなるの?」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
人々の暮らしに直結する経済ニュースは、色んな意味で、もっとやさしくあるべきだ!
と常日頃から考えている本ブログでは、経済初心者の皆様でも分かりやすいように、経済講演会で仕入れた情報を交えながら、「マイナス金利」政策の目的と影響、メリットとデメリットについて解説したいと思います。

まずは、改めて「当座預金」と「普通預金」の違いを整理しておきます。
「普通預金」は大多数の人が所持している一般的な銀行口座で、給与の振込みや各種引き落としなど様々な用途で利用されています。一方、「当座預金」とは、いわゆる小切手や手形などの決済を行うために所有している預金で、ほぼ無利息であるものの、ペイオフによって1000万円までしか保証されない普通預金と違って、仮に銀行が破綻しても全額が補償されます。

さて、現在、各銀行は日銀の当座預金に資金を預けています。これまでは預けていれば多少なりとも利息を得られていたはずが、今後はその利率がマイナス0.1%となり、逆に手数料を取られるような扱いになってしまうのです。

お金の周りがよくならないと景気は良くなりません。
そこで日銀は、これから各銀行が日銀へ預ける当座預金については、その金利をマイナスとし、利息がもらえないどころか、ただ預けているだけでは預金がどんどん減っていくように仕向けました。
そうすれば銀行は日銀に預けていた資金を企業への融資にまわすようになり、企業はその融資をもとに様々な設備投資や賃上げを行うようになるはずだ、というのがマイナス金利による景気浮揚策の仕組となります。


確かに利下げを行えば企業はお金を借りやすくなって設備投資も行いやすくなり、個人の消費ものびるはずなのですが、日本では早くから「ゼロ金利」状態になっていたため、もはや利下げに頼ることができず、アベノミクスではひたすら貨幣量を増やすことで景気の梃入れを図ってきました。
周知の通り、長きに渡るデフレ状態からの脱却を図るため、安倍政権は市場に出回るお金の量を増やし(量的緩和)、円の価値を下げることで為替通貨上の円安に導くことで、対外輸出を行う大企業に多大な収益をもたらしました。
どうやって市場に出回るお金を増やしてきたかというと、国債を大量に発行して金融機関に購入してもらい、それをどんどん日銀が買い取るという方法を取ってきたのですが、もはやその量的緩和も限界を迎えつつあるようです。
そこで切られたカードが、「マイナス金利」でした。

では、マイナス金利はわれわれの暮らしにどう影響するのでしょうか?
そのメリットとデメリットについて考えてみます。

まず、メリットとしては、住宅ローンの金利の低下が挙げられます。今回の更なる利下げによって住宅ローンなどの長期金利も下がるため、ローンの利息負担額が減ることが予想されます。
また、円の利回りが悪くなるわけですから、普通に考えると円が売られて円安が進み、これまで円安に触れれば株価もあがってきた以上、株式市場にもプラスの作用が起こるのではないか、と見られました。
が!? アメリカのGDPが伸び悩み、中国経済もヨーロッパ経済も新興国経済も不安となれば「安全資産」としてやはり円が買われてしまい、いつしか円高の方に振れてしまいました。
政府もGPIF(年金積立金管理運用独立法人)を多額の年金資金を投じて株価の下支えに出ましたが、株価は乱高下を続け、またしても多くの年金資金が失われてしまいました。

さらなるデメリットとして、銀行にお金を預けて得られる利息も減ることになり、一年を通じて得られる預金利息よりも一回のATM手数料のほうが何倍も高いなんてことが当たり前のように起こるでしょう。

暖冬の影響なのか、2015年10-12月期のGDPは前期比年率でマイナス1.4%の結果に終わりました。
少子化・高齢化による人口の減少と、内需の縮小は確実に進んでいるようです。
かくして来年4月の消費増税が困難になる一方、それは同時に国際公約を反故にするものでもあるため、少なくとも5月の伊勢志摩サミットが終わるまで、政府はこの増税路線を崩せないはず。
7月の参院選にあわせて、何らかの動きが出てくるのかもしれません。

そんな中、今週号のダイヤモンドでは、講演会講師としても人気の野口悠紀雄さんが、「マイナス金利が促すフィンテックへの移行」という記事を書かれていました。
マイナス金利を引き鉄にして、コストが増大するばかりの銀行離れが生じ、銀行外金融取引の可能性が高まってフィンテックの発展を促す、という興味深い内容です。
人気のフィンテック関連株へ投資しておけば、少なくとも今の銀行の利息よりは、資産を増やせちゃったりして。

次回は、このフィンテックについて解説します!

 
【フィンテック】
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無題

1/22 東京市場は更に値を下げ、この先、株価が1万6千円台を割る可能性も見えてきました。
世界同時株安その主な原因とされるのが「原油安」です。
シェールガス開発などにより世界最大の石油消費国であったアメリカの石油輸入が減少したこともあり、世界的に原油はいわば供給過剰の状態にあります。
通常、石油価格が下落すればOPEC(石油輸出国機構)は石油の生産量を抑えて価格を調整するのですが、シェールガスの台頭によるシェア低下を恐れて減産を行えませんでした。
もちろん石油価格が安くなれば、競合となる北米のシェールガス関連企業にも影響を及ぼし、石油や天然ガスといった原油価格はどんどん下がっているのです。


日本では消費増税による消費の冷え込みと、アベノミクスの円安主導による原材料価格の高騰が危惧されてきましたが、原油安になれば消費者は恩恵を受け、企業も生産コストを抑えることができるはず。
しかし、年始以降株価は一向に上がるどころか、下げ止まりを見せません。

それは潤沢なオイルマネーを海外市場へ投じてきた中東の政府系ファンドや資産家が、石油価格の減少による減益にともない、リスク回避のために大量に株式を売却していることが大きいようです。

さらにこうした不安定な市場ですと、同じくリスク回避のため個人資産家も株式を売りに出す傾向にあり、年始早々、中国市場が連日取引停止に陥ったのは記憶に新しいところです。

かくして日本の年金機構が株式運用のため市場に投じた年金資金も大量に失われつつあるのです・・・
アベノミクスの指南役として知られる浜田宏一氏も、1/16に出演したTBS報道特集でGPIFの株式運用がハイリスク・ハイリターンであり、その損失の危険性について警鐘を鳴らしています。


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