2017年4月に控えている消費税10%への再増税に伴い、自公の政権与党内で協議が重ねられてきた軽減税率の導入について、酒類と外食を含まない飲料食品について8%据え置きとの結論に至りました。
もともも軽減税率の導入は先の衆院選時に公明党が自民党へ約束を取り付けたもの。
これにより10%への増税によって得られる税収5.6兆円のうち、実に1兆円が減少する計算となり、2016年末までに安定的な恒久財源を確保するとのこと。
これに対し、麻生財務大臣はかねてより否定的で、事業者の事務コストがかさむデメリットや、税収が減って福祉に回る金額が減るリスクを指摘。それでも「やれやれという方がいる」と公明党の影響を暗に示唆しています。

また、その他の軽減税率対象項目について新聞や書籍も検討されているようですが、一方で、(麻生大臣は「聞いていない」と言っているものの)タバコへの増税が濃厚に。1本あたり3円の増税で4500億ほどの税収見込です。
非喫煙者として個人的な痛みはないのですが、こうしたやり取りの中で、取りやすいところから取るというような安易な増税案には大きな疑問を感じてしまいます。
もちろん、パチンコをはじめとするギャンブルへの増税も当然議論されるべきなのでしょうが、この先、様々な業界団体で、政府に対し軽減税率の対象に加えてもらうよう陳情を行う動きが活発化しそうですね。
そもそも景気後退の気配漂うこの時期に10%への消費増税を行うこと自体、間違っていると思いますが、国民としては、「消費税増税の前にやることがあるでしょう」というのが素直な気持ちで、真っ先に思い浮かぶのが議員定数削減を含めた議員歳費の削減です。

現在、国会議員一人の給与は2000万前後で、秘書の給与や交通費・通信費を含む諸経費を含めると5000万を超えてきます。
現在の選挙は「一票の格差」において違憲状態にあるため議員定数の見直しは不可欠なのですが、このことは民主党との政権交代にともない安倍首相が国民に約束したことでもあります。

【証拠動画】


もちろん、議員を減らす事によって自公のように組織票をもつ大きな政党に属する議員しか当選できなくなる危険もはらんでいるため、議員数を減らすことよりも、本質的には議員歳費を1割でも2割でも削ることが重要なのだと思います。
しかし、2016年末までの「恒久財源の確保」という割には、こうした声が永田町から聞こえてこないのはいかがなものでしょうか?
TPPやマイナンバーに関する議論を含め、臨時国会も召集されないまま、国民の上空を飛行するように、自公の密室で協議が進められている印象が拭い難くあります。

そもそも消費増税は社会保障の充実化を目的として浮上した議論のはずが、慶応大学教授の金子勝氏はツイッター上で「アベの介護報酬切り下げのおかげで、1〜11月における介護事業者の倒産件数は66件で過去最高に。これから年末。まだ増えるかも。安倍政権は介護離職ゼロを掲げ、補正予算で介護施設を増やすための基金を作るが、すでに政策は破綻しています」と厳しく糾弾。
さらに、「通貨発行権を握りカネのバラマキで国民を支配する。消費税軽減税率の与党協議で、1兆円の財源確保を先送りのままで合意。参議院選挙向けのバラマキ優先で、後は野となれ山となれ。みんな日銀が引き受けてくれますから」と、政府の対応を強く非難しています。

また、明治大学の飯田泰之氏のように、「軽減税率の導入は低所得者支援策にならない」と指摘する声も多くあります。
国民としては、少子化・高齢化が深刻な以上、例えば一人親世帯(特に母子家庭)や「下流」といわれる高齢者の貧困対策として、低所得者支援を充実して欲しいと切に思います(もちろん、生活保護の不正な受給を根絶し、必要な支給を充実させる適切な審査体制の構築も必要ですが)。
法人税減税によって企業が内部留保を溜め込む一方、国家戦略として、低賃金で立場の弱い非正規雇用を大幅に増やしている現状には、とにかく疑問です。

一方、嘉悦大学の高橋洋一氏(第一次安倍内閣のブレーン)は「消費税を社会保障目的税。これをやると、社会保障を望めば増税を飲め、増税に協力しないと社会保障を削る、軽減税率には「財源」が必要だ、なしなら社会保 障を切る、など阿漕な恫喝が横行する。消費税を地方税にして軽減税率なし、社会保障は保険料+所得税、弱者対策は所得税+給付金なら筋が通る」とツイッターで述べ、多くの賛同を得ています。

消費増税をめぐる議論は、今後の経済講演会でも注目のテーマとなっていきそうですね・・・。


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